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読み人語り〜2月の読書記録として〜

色々と本を読んでいると、時として人にも紹介してみようかと思うものもあります。
というわけで、毎月10冊ずつその月に読んだ本を紹介していこうかと思います。怠惰に怠惰を重ねて本日2月の読書記録をつけていきます(引っ越しが忙しかったので見逃してくださいまし‥‥)


1.鹿野政直『近代日本思想案内』
 明治初期から戦後まで日本に起こった思想を体系的にまとめた書籍。網羅する内容は啓蒙思想や社会主義、フェミニズムにまで多岐に渡る。この本を通じて新たに読むべき本が浮かび上がってくる、まさしく良著。高円寺の古本屋で遭遇。

近代日本思想案内 - 岩波文庫
https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b248752.html

2.『インカレポエトリ 創刊号 鹿』
 大学で詩の授業を担当する伊藤比呂美・朝吹亮二両氏が発起人となり、あらゆる大学の学生が授業で作成した詩を集めたもの。なかなか発表の機会に恵まれない学生の作品にスポットを当てており、創刊号だけでも数多くの詩が収録されている。予定されていた朗読会がコロナウイルスの影響で中止になったのが悔やまれる。

インカレポエトリ | 七月堂古書部
https://shichigatsud.buyshop.jp/items/23225190

3.宮沢章夫『長くなるのでまたにする。』
 劇作家として活躍する宮沢章夫氏による痛快エッセイ。エッセイと言っても有名女優の書くようなものとは全くの別格。これは最後の最後まで何を言っているのか分からない。「自宅に王貞治が居候していたら」「ポルトガルのキャラメルが歯にまとわりつく」など。何を言いたいのか聞こうとしても「長くなるのでまたにする」と濁されてしまう。しかし、そこがどこか憎めない。

長くなるのでまたにする。 | 株式会社 幻冬舎
https://www.gentosha.co.jp/book/b8675.html

4.チェ・ウニョン『ショウコの微笑』
 高校の文化交流で日本にやってきたショウコと私の長きに渡る交流を描いた表題作を含め、全6作品を収録。痛みを知りながらも他者と関わりあう中で自分自身に向き合おうとする人々を描く。

CHEKCCORI BOOK HOUSE / ショウコの微笑
http://shop.chekccori.tokyo/products/detail/1230

5.木下龍也『きみを嫌いな奴はクズだよ』
 サイコーの題名。若手歌人・木下龍也氏の歌集。普段であれば言葉として現れる前に朽ちてゆく様々な感情がここではあまりに美しく現れている。好きな歌をいくつか。
- 悪人も悪人なりのめでたしで終わる話でありますように
- 立てるかい 君が背負っているものを君ごと背負うこともできるよ

きみを嫌いな奴はクズだよ | 七月堂古書部
https://shichigatsud.buyshop.jp/items/24218353

6.村上春樹『職業としての小説家』
 世界的作家村上春樹による自伝的エッセイ。小説家とはどのような職業か。文学賞について。村上春樹の軌跡を追う。29歳でふと思い立って小説がかけるものなのか。氏の小説に比べると格段に読みやすく(すみません)内容がスラスラと入ってくる。

村上春樹『職業としての小説家』
https://www.switch-store.net/SHOP/BO0068.html

7.蓮實重彦『伯爵夫人
 フランス文学者である氏による三島由紀夫賞受賞作。『ボヴァリー夫人論』を完成させたあと一気に書き上げたという。男性性=戦争への一種の揶揄が込められている。三島賞受賞時の会見が話題となる。

蓮實重彦『伯爵夫人』 | 新潮社
https://www.shinchosha.co.jp/sp/book/304353/
蓮實重彦さんの三島由紀夫賞受賞会見1
https://www.youtube.com/watch?v=fenP1tJB9e4

8.ハン・ガン『菜食主義者』
 突如として肉を一切食べなくなった女性を中心にその家族が各章の主人公となる。何より、本人からの視点は全く描かれていない。周辺人物が見る彼女の姿に再生・回復の過程はない。閉塞的な韓国社会が彼女に突きつけたものは、日本の社会が私たちに突きつけるものとどこまで違うだろうか。

CHEKCCORI BOOK HOUSE / 菜食主義者
http://shop.chekccori.tokyo/products/detail/58

9.谷川俊太郎/岡野大嗣/木下龍也『今日は誰にも愛されたかった』
 詩人と歌人二人による30の連作をまとめたもの。「誰にも愛されたかった」という題名が魅惑的だ。特に面白いのが連作後の感想戦。谷川さんの短歌の解釈がなかなかに独特でそれが「あ〜だからこういう詩なのね」と納得させてくれる。

今日は誰にも愛されたかった
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784904292914

10.佐藤文香・監修『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた』
 一橋大学社会学部のゼミ生たちがジェンダーに関するよくある問いに対して答えていくもの。一つの質問に対してHOP・STEP・ JUMPの答えが用意されており、予備知識がなくても読み進めることができる。

ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた - 株式会社 明石書店
https://www.akashi.co.jp/smp/book/b458234.html