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冬の小道

 二月も下旬のころ。早朝に起きて、機械仕掛けに服を着替え、駅へ向かう。至るところに分銅が吊り下がったようでなんとなく体が重い。アパートから外へ出ると、寒さで体が勝手に震えだす。

 あいかわらず空はどんより曇っていた。曇りは嫌いだ。中途半端な情景が私の心に映るようだから。かといって雨も見飽きた。今日も雲を通したうす白い光の柔らかすぎるせいで、見える景色がぼんやりする。ここまできて晴れを乞うようである。

 しかし昨夜は一段と冷えたらしい。アスファルトには薄い氷がどこまでも張っていた。思わず確かめるようにして歩く。

 道中、コインランドリーの裏側を通る。バカでかい二台の室外機からはおひさまの匂いが香った。その干した布団の匂いと、それに不釣り合いな天気にわずかにめまいがした。どうも食い合わせが悪い。私の表情は起きてからひとつも変わらぬままであった。

 しばらくその調子で歩いて、朝食を買いにコンビニへ寄る。サンドイッチを買って食べた。冷たい。あったかいコーヒーも買うんだったと駅の辺りで悔やむ。

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