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【読書メモ】NOISE : 組織はなぜ判断を誤るのか?


1. 読もうと思ったきっかけ

2021年の5月に下の記事を読んでいて、帰国したら翻訳版を読もうと思って、2022年の2月に買っている。
この時のインタビューでは、人は直線的な(増減)現象には慣れているが、指数関数的な現象には慣れていない、理解できないと言っていて、パンデミックの捉え方として、なるほどと思った。

Exponential phenomena are almost impossible for us to grasp. We are very experienced in a more or less linear world. And if things are accelerating, they’re usually accelerating within reason. Exponential change [as with the spread of the virus] is really something else. We’re not equipped for it. It takes a long time to educate intuition.

2. 全体の感想

この本では、意思決定や判断のばらつきを「ノイズ(Noise)」として取り上げ、ノイズとは何かに始まり、ノイズがどのような場面で現れ、どのような(悪い)影響を与えるかについて、そこから、どのようにノイズを減らすのかについて論じられている。

自分にとっては、かなり難しい内容で理論的な部分を追いかけるのは厳しかった。そのせいで?途中、挫折したり、一度、Audibleで聞いてから、読み直したりしながら、なんとか最後まで読む。

内容的にはドキッとさせられる。個人、組織の判断にこんなにばらつきがあるのかと思った。ないだろうと思っている(期待している)ような場面でもそれが起こっている。

例えば、診療現場、児童相談所の子供の保護、新製品や失業率の予測、難民認定申請、人事、科学捜査など、私たちが素朴に「一貫した」判断(予測・評価)を望むような場面でも、そこには、ノイズがあるとされていて、何ていう世界だと思ってしまう。

自分の場合、ある時は学生の成績をつけるといった「評価」する立場であったこともあり、自分の評価が一貫していたのか、度を越したばらつきがなかったのか、恐ろしくなった。

一方で転職活動をしていて、採用過程における面接がどれほど一貫して正確なものなのかについては、だいぶん懐疑的になり、不合格になってもあまり自分の能力が足りないのだといったことは前ほど思わなくなった(笑)あと、面接の時間は午後の遅い時間帯は避けるようになった。同じ人でも疲れると判断が雑になったり、鈍るようだ(その方が候補者にとって望ましいこともあるかもだけど)。

下巻では、ノイズを低減するための方法がいろいろ提案されるのだが、どれも時間、労力のコストがかかるので、どれほど実践できるのか。たとえば、テストの採点を複数人で行うといったことは、なかなかできないことだ。

それでも、バイアスとは別にノイズという概念があることを知ることだけでも、本書を読む価値は十分にある。

今回は内容が難しかったので「まとめと結論」の部分からのみメモを作った。

3.メモ

ノイズとは望ましくない判断のばらつき

  • この本での「判断」は:「計測」の一種

    • メアリーの腫瘍はたぶん良性だ

    • この国の経済はきわめて不安定である

    • このリスクに対する保険料は1万2000ドルが適切である

  • 判断を下す場合には、さまざまな断片的な情報を頭の中で集約する

  • 判断を下して生計を立てる

    • フットボールの監督

    • 心臓専門医

    • 弁護士

    • 技師

  • 「予測」は判断の一種。結果が出てから予測精度を確認できるので短期的な予測は検証可能

    • 長期的な予測や仮定の質問に対する答えなどは検証できない。

  • 「評価」も判断の一種。

    • 裁判の判決、音楽や美術の審査などは客観的な正解がないため比較検討は容易ではない。

エラーを構成するバイアスとノイズ

  • ある事柄の判断におけるエラー(誤差)の大半が同じ方向に偏っている場合→バイアス(平均誤差)

    • 射撃チームの全員が順に射撃をしたところ、着弾点がほぼ全部標的の左下に偏っていた

    • 経営陣が毎年、いつもひどく楽観的な販売予想を立てる

  • バイアスを取り除いても、エラーは必ずしもなくならない。

  • バイアスを排除した後に残るエラーがあることはあまり知られていない。

  • 残ったエラーは判断の望ましくないばらつき。現実に当てはめたものさしが信頼できない→ノイズ

    • 医師Aと医師Bの判断のばらつき

  • 多数のプロフェッショナルが日々判断を下す組織に見られるノイズ:システムノイズ

    • 緊急治療室の医師

    • 刑事裁判で量刑を決める裁判官

    • 保険会社で料率や損害額を決める保険の専門家

ノイズが問題となるケース

  • 企業、医療、刑事裁判、指紋鑑定、予測、人事評価、政治など判断のあるところにノイズがある。

  • 同じような状況に置かれた人たちが異なる扱いを受けるのは不公平

ノイズの種類

  • レベルノイズ:各人の判断の平均に見られるばらつき

    • 甘めな裁判官と厳しめな裁判官

    • 市場アナリストの強気な人、弱気な人

    • 抗生剤を出したがる医師とそうでない医師

    • 判断尺度があいまいな場合:7段階尺度の3・4は人によって解釈が違う

    • レベルノイズはあらゆる判断システムにおいて重要なエラー要因となり、ノイズ削減をめざすときの重要なターゲット

  • パターンノイズ

    • 多くの場合、レベルノイズより大きい

    • 甘めの裁判官Aがある犯罪に対して、ひどく厳しく、ふだんは厳しめの裁判官Bが逆にひどく甘い傾向を示すことがある。(AとBとでは犯罪の順位づけがちがう。このばらつきをパターンノイズ、統計学では交互作用)」

    • ある判断対象に対する判断者固有の考えや価値観など、比較的安定した傾向に起因すると考えられる。判断を下す当人も気づいていないことが多い。

    • 安定したパターンノイズは判断者固有の特徴に起因

    • パターンノイズがシステムノイズの最大の原因

    • パターンノイズには一過性の原因に起因するノイズも含まれる→機会ノイズ

      • 放射線科医が同じ撮影画像について、別に日に違う診断を下す

      • 指紋分析官が二つの指紋を同一だと鑑定し、別の機会にはちがうと鑑定した

      • 午後になると医師は強い鎮痛剤を処方しがちになる

判断の心理とノイズ

  • 予測的判断におけるエラーの原因は客観的無知

    • 内なるシグナル

    • 心理的バイアス

ノイズは目につきにくい

  • バイアスより地味

  • バイアスは因果的説明ができるので納得感がある

  • ノイズを発見するには統計的に探究しなければならない

ノイズを(そしてバイアスも)減らすには

  • よい判断を下せる人とそうでない人がいる

  • よい判断を下せるのは、その職業に必要な専門的なスキル、知性、ある種の認知スタイル、特に積極的に開かれた思考態度を備えた人(自分の判断は違うと思えば変えられる人)。

  • エラーを減らす一つの方法は、バイアスをなくすこと。

    • 判断を下してから事実と照合して修正する事後方式

    • 判断を下す前にバイアスの可能性を取り除く事前方式

    • 意思決定プロセス・オブザーバーを指名し、リアルタイムでバイアスの兆候を見つけ出す

  • 判断におけるノイズを減らす方法としては、判断ハイジーン

  • 衛生管理を意味するハイジーン

  • ノイズを減らすのは衛生管理と同じく特定できない的に対する防御だから

  • 判断ハイジーンの6つの原則

    1. 判断の目標は正確性であって、自己表現ではない

    2. 統計的視点を取り入れ、統計的に考えるようにする

    3. 判断を構造化し、独立したタスクに分解する(過剰な一貫性を抑える)

    4. 早い段階で直感(内なるシグナル)を働かせない

    5. 複数の判断者による独立した判断を統合する(事前に出席者各自の意見を聞いておく)

    6. 相対的な判断を行い、相対的な尺度を使う

どの程度のノイズなら容認できる?

  • バイアスがエラーを不公平につながることは誰でも知っているが、ノイズも同じ

  • 重要な事柄についてよりよい判断をしたいと望むなら、ノイズを減らすことを真剣に考えるべき


*序章がnoteで公開されているようです。


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