ミステリーハウス:はじめてパソコンに触る(ゲームつくる日々1)

大学の授業をサボって、家電量販店のダイイチへ行く。地下へ。パソコン販売のフロアだ。
展示のPC-6001は、師匠が使っている。師匠のタイチくんは、小学生だ。
「待ってたよ。わかったんだ」
カバンからカセットテープを取り出し、パソコンにつながっているカセットレコーダーにセット。プログラムをローディングする。

タイチ師匠に出会ったのも、この場所だ。
高くて買えないけれどパソコン欲しいと思ってふらっと寄ってみたフロアで、小学生が展示用PCで一心不乱にゲームをやっていた。
黒い画面に、シンプルな白い線で部屋とはしごが描かれている。ぼくが後ろで観ていることに気づくと、画面を観たまま話しかけてくる。
「ここでラダーをモベするんだよ」
キーを叩いてMOVE LADDERと入力する。はしごの絵がズレる。

後から教えてもらうことになるのだが、表示されていたのは、初の国産グラフィックアドベンチャーゲーム「ミステリーハウス」。見知らぬ洋館のなかで宝探しをするゲームだ。
メッセージは、ひらがなカタカナの日本語だが、プレイヤーは英語でコマンドを入力する。階段を動かすには、MOVE LADDERと入力するのだ。

「やってみる?」
「お、おお」
なれなれしい小学生相手におどおどして、キーボードにさわってみる。
「ウセハマーだよ。ハマーで叩くんだ」
「え?」
戸惑ってると、手を出してきて、結局小学生がやっている。
USE HAMMER。
「ユーズ ハンマーか!」
画面のラインが描き替えられ、「かべのむこうにへやがあるよ Hit any key!」とメッセージがでてくる。
師匠がしばらく進めて、「ほら、ここでモベだよ」と、モベならできるだろうぐらいの勢いで、ぼくに交代してくれる。
MOVE RACK。ぼくが、初めてパソコンでやったことは「ラックを動かす」だ。(→「デゼニランド:アドベンチャーゲームに苦悩する(ゲームつくる日々2)」に続く)

*記憶も曖昧で、思い出したことがどれほど正しいのかは心もとない。が、「だったと思う」「かもしれない」みたいな語尾になると読みにくくなるので、「どうだったかなー」という部分も断定して書いている。また当時の状況、ゲームなど、今となっては判りにくい部分もあると思う。そこで、以下に補足解説をつける。

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