デゼニランド:アドベンチャーゲームに苦悩する(ゲームつくる日々2)

これまでの話「ミステリーハウス:はじめてパソコンに触る(ゲームつくる日々1)

大学をさぼって家電量販店ダイイチのパソコンフロアに行くと、例によって小学生の師匠タイチくんがいる。
こちらを向いて「待ってたよ。わかったんだ」と言う。
デゼニランドだ。
千葉県に対抗して埼玉県に建設された「デゼニランド」。そこに隠されている伝説の秘宝「三月磨臼」(みつきまうす)を探し出し、デゼニランドから脱出するのが目的のアドベンチャーゲームだ。
絵が描かれるスピードも速くなり、色もついた。
「ミステリーハウス」が誰も居ない洋館の中を探索する設定でクールだったのに対して、「デゼニランド」は受付嬢やオヤジが登場し、さまざまなアトラクション巡りをすることになり、ポップだ。
だが、むずかしい。コマンド入力で、コマンドは英語だ。MOVE CAN
GET KEY と入力してゲームを進めていく。
棺桶があり、棺桶のフタには十字架のくぼみがあり、アイテムに十字架がある。もうこれは、PUT CLOSSだろうとやってみるが受け付けてくれない。SET CROSSもUSE CROSSもダメ。
そのシーンで行き詰まって、その日は解散。
次に行ったときに、タイチ師匠はぼくの顔を見るなり「わかった」と言って、テープでゲームプログラムをロードし、そのシーンまで進む。
「ここで、ATTACH CROSS」
MOVEはモベ、USEはウセと発音していた小学生師匠は、このときしっかりとアタッチクロスと発音した。
タンッ! リターンキーを押すと、棺桶が開いた。
ATTACHなんて単語はいままで登場していなかったし、なぜPUTやSETではダメなのか不明だ。
いまとなっては理不尽な文字探しゲームだが、当時はそれでも面白かった。正解が判明し、次の画面に進むことが興奮だった。こちらが何かを入力することで、コンピュータが次の画面を表示してくれることそのものがエキサイティングな体験だったのだ。
ぼくたちは最大の難所を突破したと確信した。
けれど、ぼくと師匠は、デゼニランドを一緒にクリアすることはなかった。(続く)

*記憶も曖昧で、思い出したことがどれほど正しいのかは心もとない。が、「だったと思う」「かもしれない」みたいな語尾になると読みにくくなるので、「どうだったかなー」という部分も断定して書いている。また当時の状況、ゲームなど、今となっては判りにくい部分もあると思う。そこで、以下に補足解説をつける。

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