無料が文化を壊す:ゴールデンカムイ無料公開とSNS
無料はヤバいのだ。
文化を壊すからだ。
文化は、
だ。
それぞれのコミュニティで、耕され、洗練され、教化されてきたものが文化だ。
だから、耕された文化を知ってる人にとっては自明の暗黙知が、知らない人にとっては、奇矯な風習に見えることも多々ある。
たとえば、大人気『ゴールデンカムイ』が無料で公開される。
それまでも、大人気でたくさんの人が読まれている作品だが、読んでる人の大半は「興味があって」読んでいる。
だから、マンガ全体の文脈であったり、連載やコミックスを追うなかで生まれてきた文脈だったり、そういった「文化」のなかで読んでいる。
文化というと大きく捉えがちがだ、ここでは大小無数の文化が存在することを改めて思い起こしながら書き進めるために「文化/文脈」と表記することにする。
だが、無料で公開されると、その文化/文脈から外れた人が押し寄せる。
「無料文化」の人たちだ。
まったく興味ないものを、金を出して買う人はいない。
だが無料になると、まったく興味ないものでも手を出してしまう。
無料で新製品の飲料が配られてるとついもらってしまうように。
「無料文化」で押し寄せた人は、受け取って、興味を持ってしまう(新製品を無料で配るのは、興味がない人に興味を持ってもらうためだ)。
そして、文化/文脈をしらないままに、何か発言してしまう。
Yahooニュースにコメントしている人の多くはそうだろう。文脈を気にしたくない、いっちょかみしたい人だ。
本文を読まずにタイトルだけに反応するコメントなどは、いっちょかみの最たる例だ。
藤津亮太さんの「20歳が観るべきアニメ38タイトルを選んでみた」という原稿に対して(本文を読めば意図は明確に書かれているのに)、「べき」に過剰反応して、「好きに観ていいじゃないか」と、わざわざコメントするのも同様な文化/文脈の無視だ。
(もちろん、いまはわかりやすいように二分化したが、グラデーションだ。どのぐらいにどう受け止めるかは区別されるほど単純じゃない。以下、分かりやすく進めるため、このグラデーションはいったん無視する)
いっちょかみしたい人は、文化/文脈が嫌いだ。文化/文脈を無視して首を突っ込みたい。
だから、その文化/文脈を少しでも感じ取っている人には、ピント外れの言説になる。だが、文化/文脈を知らない人には届いてしまう。ここが問題になる。
もちろんマンガ文化や、ゴールデンカムイ文化は、今回の無料化でプチ炎上したぐらいでは壊れたりしないだろう。
だがTwitterなどがコミュニケーションのツールとして利用されてる空間では、へんにこじれることになる。
Twitterは140字単位で文化/文脈を断絶することで手軽さを生み出す装置なので、「いっちょかみ」化しやすい場だ。そこで議論しようとする愚。
いっちょかみしない。いっちょかみはスルーする。っていうためには、「SNSは断捨離する」「文化/文脈が必要なものは無料で公開しない」のがいまのところ一番の解決策かなーと思っている。
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と、これぐらいのことでも(しかも、冒頭わざわざ乱暴に書いてしまっているから)、文化/文脈を無視して絡んでくる人は出てきそうだ。が、以下のようなことを書くと、さらに増えそう。なので、以下は「表現道場マガジン」購読者のみに。
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