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3つの言葉を使って創作してみる。選ぶ言葉は適当に思いついたもの。(創作②)

雨 車 クッション

「雨は嫌い?」

雨の日にはいつもそう聞いていた君の記憶が蘇る。

僕はなんと返事をしていただろうか。


最初にそう君が僕に聞いたのは、初めてドライブした日の帰り道。

車の窓に映る雨粒を見ながら、

「雨は嫌い?」

と、つぶやいた。

デートの緊張と雨の中の運転に緊張していた僕は、

「うん、そうだね」

と、相槌を打つだけで精一杯だった。

格好つけたくて、父親に車を借りたのはいいけれど、夜の運転にも、雨の運転にも慣れていなくて、事故に遭わないようにと、必死に運転していた。

帰りの車の中は会話が少なかったから、振られたかもな、と思っていたけれど、

「楽しかった。また遊ぼうね!」

と、君からメールが来たときは嬉しくて嬉しくて、

「何、ニヤニヤしてるの?キモいんだけど」
と妹に言われるくらい顔に出ていたらしい。

すぐに返事を返したかったけれど、なんて返事をしようか迷って、迷って妹に助けを求めた。

「そんなの、自分で考えろ!」

思いっきり、クッションを投げつけられた。

仕方ない。自分で考えるしかない。

「僕も楽しかった!今度はどこに行きたい?」

シンプルイズベストだ。自分が楽しかったことも伝えつつ、次の約束ができる。

完璧。

送信、っと。

まだLINEがない時代は、相手がメールを読んだか分からず、返事が来るまでのドキドキ感がたまらなかった。

「遊園地がいいな。ジェットコースターは苦手だけど、観覧車に乗りたい」

「いいね!今度は電車で行こうか」

「いいよ」

そんな短いやり取りだったけど、30分はかかっていた。でもそれがまた良かった。


2回目のデートは駅で待ち合わせをして、電車で遊園地に向かった。

ひと通り遊園地を回って、最後に、約束していた観覧車に乗った。

空がだんだん暗くなり、夕立が降りそうな空模様になってきた。

「夕立が降りそうな空だね。帰るまで降らないといいね」
僕は何気ない会話をしながら、キスしたいなぁと考えていた。

「雨は嫌い?」
君はまた、そう聞いたけれど、僕は上の空で答えた。

「どっちでもないかな〜」



5年後、ふとそんなことを思い出して、妻に聞いてみる。

「昔さ、雨は嫌い?って俺によく聞いてたでしょ。あれなんで?」

「あぁ、そんなこと聞いてたね。特に深い意味はなかったんだけどね。私は雨が好きだから、雨が嫌いな人とは合わないかもって思って聞いてたの」

「え、だったらなんで、2回目のデートも行ってくれたの?確か俺、1回目のデートの時、雨は嫌いかって聞かれて、うん、そうだねって答えた気がするんだけど。2回目はどっちでもないって答えたけど…」

「それはさ、雨が好きとか嫌いとか関係なかったってことだよ」

「それって…」

「あ、雨降ってきた。洗濯物取り込まないと」

そう言って、妻は階段を上がって行った。



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