見出し画像

阿賀北ノベルジャム2022参戦記#22「大詰」

 また間があきました。すみません。

 いよいよ完成稿提出まで少しです、って、書きかけのまま時間がすっかり経ちました。今日はもう2023年ですよ。ひいい、年越しちゃった。

編集不在

 で、結局、ノベルジャムは本家Noveljamと同じく著者参加の場合は編集さんに原稿をガチで見て貰えるのが楽しみだったんですが、

 うちのチーム、編集が来ない……全然来ない……音信不通……。

 仕方なく2人の著者とデザインの亜登武さん総動員で検証と校正作業するしかなくなります。


 残念だけど致し方なし。もうムスカの冗談もでないほど追いつまります。なにしろ今回は電子と紙の本を一気に作らなくちゃいけない。前まではそういう用途に適したBCCKSだったので自動的に両方作れたけど、今回はなぜかオフセット印刷も作ることになって作業量がガタ増え。

 しかもワタクシ個人はワタクシの模型サークル関係の本も作るので、作業量が「さらに倍」って、往年の大橋巨泉かよ(たとえが古すぎ)。ほんとにしにそうになります。しかも長時間バイトもがっつりあるし。

 そのおかげで毎晩3時まで作業の日々るるるー。頭がどんどんおかしくなっていきます。

 でも愚痴言ってても少しも良くならんのです。前に進むしかないのです。

調整

 とりあえず雪子さん「春の塑像」とワタクシの「走れ雪水米宗!」の間ですこしシェアワールド風味の事やってみませんかということに。そんな余裕ないかと思ったけど雪子さんもやりたいというし私もこういう無理は楽しいのでやることに。

 で、新発田駅駅員コンビが「春の塑像」の一彩さんに切符をマルス端末で発券して売るシーンを考えました。

 ところが。一彩さん東京在住であることが判明。ええっ、うっかり新発田に住んでるつもりだったよ、でも考えてみれば新発田にそんないくつも大学ないよね。理系の大学なんて特に。あるのは敬和ぐらいだし。しまったなあ。

 というわけで仕方ないので考えます。東京在住ならどこの大学だろう…。むむむ。で、雪子さんから答えが帰ってきて、その大学に通う一彩さんの住まいを一彩さんの実家とか個人の経済規模考えながら不動産屋さんのサイトで調べていきます。

 ほんとはね、新発田在住だと往年の急行「きたぐに」の話ができたり、大回りでいったりと話が広がるのですが、でもそのために新発田に架空の理系大学作るのははばかられる。って「あがのあねさま」で新発田に未来実験立体都市を架空で作ってるワタクシが何いってんだですが、そこは自重したいところ。雪子さん作品の最大の武器、繊細さ、高解像度を荒らしてはいけないわけで。

 で、次に考えたのが就職活動で一彩さんが新発田に一度戻って、忙しい中新発田駅で東京から京都への切符が買えることに気づいて新発田駅に来る、という話。これはそんな無理ないかも。問題は東京-京都って近すぎてフェイクの経路作って話ふくらませるのが難しい。普通に新幹線の切符買っちゃえばいいわけで。楽したいなら宿セットの「ひかり」や「こだま」のグリーン車、さらには高速バス、ぐらいしかない。参ったな…。

 とりあえず設定を詰めて行きます。そうして一彩さんの住まいは洗足であることが判明。なんだかこうやって調べてく私が一彩さんのストーカーみたいに思えてきます。「サンチョウメ、サンチョウメ」と阿部真央「ストーカーの唄、3丁目、あなたの家」が頭の中でヘビロテし始めます。ひいい。でもあれは女の子のストーカーだからまだいいけど、49歳おっさんじゃしゃれならないよ<うっ、コンプラ的にも問題がある!

 で、洗足から新幹線に乗るために一彩さんがどう行くかを今度は駅員井上鳴海の立場で考えます。

 ところが。ワタクシ、無意味に12時に到着の新幹線を選んでしまう。「一彩は一刻も早く波多野に会いたいので朝イチの列車にしてください!」雪子さんから指定。そりゃそうだ、一彩若い女子大生だもの。高速バスだろうがなんだろうが若さで乗れちゃう。私みたいに階段がヤダ、なんてことはないわけで。うっかり出てしまったワタクシの年齢の発想になってたことに恥ずかしかったりさびしかったり。うん、ワタクシもう若くないんだよなあ…。やってることは子供だけど。

表紙調整

 それやってるときに亜登武さんと表紙の打ち合わせと詰めをやっていきます。これ編集の仕事だよ……でもいないから私がやるしかない。編集、ゴジラの編集辞職ビームに焼き払われたのかな、なんて思う。「いないもののこと考えてもどうにもならないんだ!」とキレる『シン・ゴジラ』の矢口蘭堂(長谷川博巳)みたいになりますけど私ではタダのおっさん……。長谷川博巳に生まれたい人生だった……。

 で、亜登武さんの表紙、雪水米宗はプラレールいっぱいの青にグレーを混ぜて作ったすごくシャープなもの。これはさすがフォトグラファーらしいキレで、おおっ、と思いました。春の塑像は春の渓流の水面です。ただなかなかこっちは難しい。亜登武さんなりの考え方も筋通ってるけど、それはそれで視認性とかわかりやすさでは調整必要かなと。でも私著者で編集じゃないのよ……。あんまりやれないの。ほんとは。

 いいもの作るには少し軽い喧嘩するぐらいの真剣さとそれでも一つのものを作るための信頼が両立すべきです。だからいいっすねー、そうですかー、だけだとタダ時間空費してどんどん悪い妥協の塊になる。かといってその軽い喧嘩してもいいのは編集が仕事としてやるときのみ。ううう、これは私にはしんどい。

 でも意を決して亜登武さんにお願いしてみます。ほんとこれ、緊張したんだけどね。人によっては悪いツボついちゃうことあるから。それにテキストだけのDiscordでやってるのですごく難しい。

 だけど亜登武さん、ぐぐっと距離近づけて「やりましょう!」といってくれた。ありがたい……。現実的にほかの方法ないとはいえ、さすがの判断です。私の危惧はちゃんと杞憂に終わりました。つーか編集の仕事だよこれ……。この間に私の原稿は進まない、はずですが、へっへっへっ、「雪水米宗」の原稿、ずっと前におわってるのでノーダメージ。編集と調整しながら進めるはずだったのだけどこの状態で見切りつけて脱稿先に済ませてたんです。しょーがねーなあ。

 で、ここで亜登武さんとの遠慮関係が信頼に少し転換できたおかげで雪子さんも心理的安全性ができて一気に進み始めます。しかたないけどここからは私の責任です。実はここまで遠慮で「雪水米宗」の「宗」が「宋」だったりするミスもあったのですが、亜登武さん遠慮していってなかった事実が判明……。ひいい、ごめんなさい!!

 でもそういうとこも訂正し、視認性もいろいろ検討します。あとはじめの表紙に定価の数字デザインしてあったんですが、これはすいませんと外してもらいます。これデザイナーとして不満なところだと思うのですが、一般的に本の表紙カバーに定価は書いちゃいけないものなのです。なんでかというと消費税率変わったり内税外税変わったりあとから値下げ値上げされたりしてしまうものすごいロングスパンの商品が本なのです。だからデザインで入れ込んでしまうとあとでカバーを何度もやり直すことになるのです。これ出版の豆知識なんですがふつーそこまで考えないので亜登武さん悪くない。編集がスパッといえればいいんだけど私編集じゃないし編集は不在だしぐぬぬ。でも亜登武さん「いいっすよ!」とやってくれる。チームとしてだんだんよくなってきててうれしい。こういうのはほんと楽しいのです。

 亜登武さんもどんどん乗ってきて中表紙までデザイン。めちゃかっこいい……。BCCKSには中表紙ないんですが今回作るオフセット版にはあるんですよ。これはいい。さすが。ただそれにつかう私の作った列車『雪水米宗』の図版をアップデートしてたのでそれも差し替えます。

 一彩さんの切符を新発田で発券する話、これ帰りの切符も考えようと思ってこれも打ち合わせ。別れを惜しんで最終の新幹線で帰るかと思ったら、次の日程があるので早めに帰るんです、とのこと。なるほどなあ。それだけ二人の信頼が深いってことなんだろうなあ。なるほどなるほど。ただ恋人の新幹線での別れって言うと私の世代は「きっと君は来ないー」で始まるJR東海TVCM「シンデレラエクスプレス」のイメージが……。というわけで雪子さんにそのYouTube動画を紹介すると、一彩さんのイメージが往年の牧瀬里穂に重なることが判明。うむう、そうなのか。ええのう。だんだんイメージがわいてきます。というわけで帰りの切符は発券しないことに。往復割引も東京京都だときかないから別の展開を探した方が良さそうです。で、結果「雪水米宗」のマルスの裏コマンドの話に。ちょっとやり過ぎたかな……。

 表紙の方もどんどん詰めていきます。あんまりこっちの思ってること押しつけると亜登武さんのやる意義がなくなるし、かといってそのままでは2人3人で見てる理由がなくなってしまう。編集がいればそこ整理できるのにいないからどうにもならぬ。しかたなく私も腹くくって亜登武さんにリテイクをお願いします。で、結局こうなったので責任は私にある。でもいい表紙になったと思う。


価格設定

 あと本の値段決め。BCCKSでの売価を決めます。ただほんとこの売価設定って難しい……。操作は簡単だけどどう考えるか。これは商売のセンスなんですがあいにく私にはそれ全くない。

 大台を超えない額で安く見える98円作戦なんてのもあります。100円より98円、1000円より980円。2円とか20円しか違わないのに大台超えなければ買ってしまうと言うのもある。でも本でそれやるのもなあ……なんて考えたり。
 あとうな重の松竹梅作戦。本当に買ってほしい価格帯を竹としてあえて松を高めに決める。そうすると人間の心理として梅はヤだけど松は手が出せない、じゃあ妥協で、と竹に誘導されるという説。

 こんなこと知ってても、できないものはできない。むむむむむ。

 さらに売価が決まるとすでにページ数と判型で原価は出てるので印税が決まります。で、これをどう配分するか。普通は著者、編集、デザイナーで寄与分ずつで割るんですが……。編集来てないのにあげるの?という気もするけど、まだやめてないから顔を立ててとか、音信不通に立てる顔なんかあるかい! と脳内会議室が紛糾します。

 というわけですごく胃が痛みながら配分案を考えます。「任せてしまって済まない」と亜登武さんにいってもらえて救われます。ほんとストレスでした……。ぐぬぬ。

 そしてBCCKS用内容紹介を書きます。これも原案作って検討。これも編集の仕事だけど以下略。(以下略しないー!)こんな調子なので本の編集への印税率は0になりました。そりゃそうだ、全然来ないんだもの。

 で、模型の方がついにできました。もう編集の代役でストレスマックスなので模型に逃げてたんですが、できちゃった.…。食堂車のテーブルランプも点灯式の食堂車を買って移植して点灯式にしました。こんなかんじかな。

作り込み


 訂正のほかにも作り込みを行います。「春の塑像」登場する二人の旅行記を追加コンテンツとして作る話、雪子さん覚えていてくれて作りました。だがしかし! なんとこれ横書き。確かに横書きの方が見やすいけど……小説本文は縦書き。ぐぬぬ。でも商業で縦横書き混在というのはなくはない。私も見たことがある。で、運営提出用データもBCCKSデータでもそれはできる。

 というわけで亜登武さんにさらにブラッシュアップしてもらって収録することに。

 繰り返すけど私編集じゃないのよ……。音信不通ヤメテ……。でもしかたないのです。

 その間にざくざく私の模型サークルの雑誌も進めていきます。バイトもびっしりでわっしょいわっしょい。とはいえ12月ヒマにしてると君アブナイからね、とナミノフに言われていたけど、それほんとなんだよね……12月季節性の鬱があるのです。ナミノフにばれてる。

 それでいろいろあってミスが起きたりするけど、だんだん3人で解決する流れができてきます。ようやくワタクシの『走れ雪水米宗!』のほうの誤字脱字チェックも実施。多くの目で見てもらえる原稿は久しぶり。ありがたいなあと思いつつ修正していきます。

 一見順調に見える? おかしいなあ、それどころじゃなかったのですが……。というわけでどうそれどころじゃなかったかがこの後続きます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?