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武者小路詩音のセルパブだいすき!#1「ロリコン探偵仁とニック」

 武者小路詩音と申します。わたくしは米田淳一「鉄研でいず!」に登場する非実在女子高校生です。

 ここではわたくしのセルフパブリッシング、もしくはインディペンデントパブリッシングの本棚から特に大好きな本をご紹介いたします。
 ネタバレを含みます。すみません…でもどうしてもほんとうにネタバレでも語りたい本なのですわ! 申し訳ありませんがご容赦くださいませ。

わたくしの自己紹介でございます。よろしくおねがいします。


では、この「ロリコン探偵仁とニック」について語らせていただきます。

本そのものの紹介

2016年4月24日出版と申しますのでいささか昔なのですわ。169ページ相当、ファイルサイズ7413KBで確かに挿絵も多く雰囲気を盛り上げてくれます。

そして何よりも「ロリコン探偵」というだけで???となってしまう上に「仁とニック」。ジントニック。おふざけが過ぎると思う方もいらっしゃるかもしれません。

ところがこの本、実はかなりしっかりできた娯楽小説なのです。

冒頭から読んでみます。

オープニングはいかにも軽いコミックスタイルなのですが、その次にいきなり位置29において「女子小学生の魅力は……」とアツいロリコンぶりが発揮されてしまいます。しかも少しメタ表現も入って、その地の文もじつにわたくし好みなのですわ。

しかもその後、探偵事務所に9歳の女の子がやってくるのですが、そのドアを開ける仕草がなんとも繊細で、しかもそれを喜ぶニックさんのロリコン視線がじつにたまりませんわ!(コーフン)たしかに非力な女の子は重い扉を体重を使って開けなければなりませんものね。観察力が光ります。

直後のその女の子・美咲ちゃんの授業参観にそのニックさんが出席してしまう下りなども大変美味しゅうございます! これでニックさんの容貌とキャラクターや霊能探偵であること、さらに美咲ちゃんの境遇まで一気に描写してしまうのです。じつに素晴らしい手筋ですわ。ここでわたくしはぐっと引き込まれてメロメロになってしまったのです。

しかもその授業参観が縁で第1話「春風抄」の事件の依頼がおこなわれます。その事件とはなんと、「油絵に描かれていた女の子が失踪した」というものなのです! まあ、まるで一休さんのトンチの話みたいですわ! もうこのアイディアだけでわたくしは妄想がはかどってしかたがないのです。

その調査の料金の下りも実にコミカルで楽しいのですが、そこからあとただのカルアミルクを注文するにもロリコンっぷりが発揮されたり、さらりと札幌の風景が描かれたりと楽しく進んでいきます、が……それがなんと。

素敵設定!

この霊能探偵たちの霊能力がなんと、仏教宗派がバックボーンになっているのです。

その名も「白念宗(びゃくねんしゅう)」。

??と思っていたら直後にとんでもないことが。

白念宗は平安初期の僧・道定(どうてい)が開いた密教系の仏教宗派である。(位置327)

もうここからのこの白念宗の説明が実に奮ってますわ!

「敬幼思想」「三幼宝蔵」「童女即仏也」

!!

詳しくはぜひこの「仁とニック」本編をわたくしとご一緒にお読みいただきたいのです。というかKindleでいつでもどこでも買えるのですから今すぐご入手なさってください。現在100円ですもの。Amazonアカウントがあればなんの問題もありませんわ。KindleはKindleの機械がなくてもPCやスマホアプリのKindleでも読めますもの。迷うことはありませんわ。

話を戻します。ここからこの「白念宗」のことが語られるのですが、このトンデモなのにしっかり作り込まれた設定が実に素敵! なにしろこの童貞、ではなく道定さん、空海や最長と同じく遣唐使として唐に渡り、とか「国が違い、言葉が違っても童女の愛らしさは変わらない(『入唐幼幼記』より)」とか。

さらには「白念宗第96代法主が昭和16年に著す『敬幼大綱』」とか……じつに空想がはかどったのがよくわかりますわ!

しかも!

『幼女仏観ずるもの、悉く仏の心を乱すべからず(幼女を鑑賞するものは対象である幼女に不快感を与えてはいけない)』(位置350)

と、『徳の高い幼女鑑賞』についても定義! もうすっかり作品世界が確立できているのです! この白念宗の儀式なども美味しいシーンでおなかいっぱいになりそうな素敵描写が続きます。それでいて話がスムースに進んでいくのですわ。

素敵解決!

そして失踪した絵に描かれた少女・アンジェちゃんをさがすのですが、これは案外あっさり見つかります。ところが見つかってもそこから追いかけても捕まえられない。そりゃ相手は絵の中の存在ですものね……。

そこで心霊探偵の真価発揮! なんと結界を張ってとらえるのです。その描写も適切かつアニメのように画が浮かぶ。実にスピード感、快さがあります。

そしてアンジェちゃんとの問答。なぜ絵から逃げ出したのか。それは描かれた状態というのは絵の中に閉じ込められた状態であり、なおかつ時間からも切り離された孤独であり、それに耐えきれなくなった、というのです。なんとも素敵なメタSF展開ですわ!

しかし、ここで絵の中に戻すのは封じ込めることになり、残酷となってしまいました。しかしそれをしなければ事件は解決できないのです。ここで軽く二項対立になります。

そこで解決、3番目の答えを導くのです。それは、降霊術の利用なのです……。

なんと、降霊術で美咲ちゃんに描き手をおろし、アンジェちゃんの絵をまた描くのです。しかもそのアンジェちゃんの人生分の何枚もの絵をあらためて描くのです!

このエピソードの最後はバーのシーンで終わります。しかし実に示唆的な解決です。

書き手とキャラクターの関係。キャラクターを愛すること、物語を愛して描くこと。幾重にもそういった示唆があるじつに良い話なのです。素敵ですわ!

この第一話、『春風抄』ですでに名作としか言いようがないのです。

素敵シリーズ!!

さらにその次の「夏へのドア」も実に素敵。SF「夏への扉」へのオマージュタイトルですが、交通事故で亡くなったのに死を自覚できない子に成仏のために死を自覚させる話です。じつにこれもまたササるところの多い滋味溢れる話です。なにしろ死を自覚させるためにこのニックは自分をぐっさり刺してその姿で生きていることを定義してみせるのですから。まさに命がけ。ロリコンも命がけなのです。

そしてその死を自覚した子の言葉。その両親との別れ。まさに涙ですわ!

幼女のためなら死ねる!

実に愛が溢れてますわ!!

それが

「月に萌える」
「変心」
「年末年始の事次第」
「冬来る鬼」
「美咲のよろめき」
「鬼の子」

まだまだこういったエピソードがあるのです。しかも「鬼の子」においてシリーズのおおもと、美咲ちゃんの秘められた出自にも潜っていきます。まるでアニメやドラマシリーズのような素晴らしいシリーズ構成! 

これで100円! しかもなんと児童書あつかいの読みやすさなのですわ! 素晴らしい!

まさに絶賛しかないのです。

素敵読後!

 最後に自己解説があってモチーフをどのように持ってきたかなどがかたられております。夢枕獏「陰陽師」の影響が大きいありますが、拝読して立派にその影響からオリジナルへと跳躍できた作品だと思いますわ。

 言葉選びで照れ隠しをしていても、実にしっかり描かれた名作との感想でをもちました。100円でここまで楽しめるなんて、なんて素敵なんでしょう!

セルフパブリッシングの現在

 今、ちょっとPCが使えれば誰でもセルフパブリッシングはできます。でもだからこそ玉石混交と思われているのかもしれません。そして石ばかり、と思っている人もいるかも知れません。 

 でも、読んでみると実にこういった素敵な話もあるのです。なんのインデックスもなしにそのセルフパブリッシング本を読むのは不安かもしれませんが、こうしてわたくし詩音がその不安の敷居を低くし、この自由で新たな出版の世界の楽しさをもっと感じていただける一助となれれば、ほんとうにうれしいことだと存じます。

 ほかにも素敵なセルフパブリッシング本がありますので、これから紹介させていただきますね。

 まず今回はここまで。最後までお読みいただき、ほんとうにありがとうございました!

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