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「不在」暴力の理不尽と音楽

アストル・ピアソラ作曲「アウセンシアス」は、フェルナンド・ソラナス監督の1985年の映画『ガルデルの亡命』のために作曲された作品です。
この映画は、アルゼンチンの軍事政権時代にフランスに亡命した芸術家たちの姿を描いた映画で、彼らが祖国への郷愁の想いを込めて上演しようとしている演劇のタイトルが『ガルデルの亡命』。
このアウセンシアスは劇中劇の音楽という位置づけで登場します。

アウセンシアス(Ausencias)とはスペイン語で「不在」という意味。
果たしていったい何が不在なのでしょう?
それは大きな力に踏みにじられた人々の姿なのでしょうか?
実際に軍事政権時代のアルゼンチンでは芸術家たちは警察にマークされ、いわれのない迫害を受けたと言われます。(その当時、警察に連行されて拷問を受けたというアルゼンチン人に会ったことがあります)

ここ最近の世界情勢を見るにつけ、2022年になっても変わらない暴力の理不尽さにやるせない気持ちになります。
アルゼンチンの例を見ても分かるように、音楽などの文化も望もうと望むまいと、政治や社会の変動に巻き込まれざるを得ないのです。

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