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国際物流スタートアップをデザインの力で前進させる。

ごあいさつ

はじめまして、こんにちは。GoodpatchでBXデザイン(Brand Experience Design)を担当してる米永です。 Goodpatchでは昨年BXチームが新たに設立されV/M/V構築、カルチャー浸透支援などコーポレートブランディングのお手伝いも増えてきています。UI/UXデザインを主軸に置きつつも領域をどんどん広げています。

昨年は、契約マネジメントシステムHolmes、そしてユーザベースグループのFORCASをお手伝いをさせていただき、今回の国際物流スタートアップShippioは3つめのBXプロジェクトでした。

▼事例インタビュー記事

🔗ビジョンドリブンなアプローチによるブランドデザイン事例。 契約マネジメントシステム「Holmes」

🔗価値の構造化で、プロダクトの未来を描く。FORCASとGoodpatchの共創

🔗内側からデザインする。ShippioとGoodpatchが向き合ったブランドエクスペリエンス

Shippioプロジェクトのはじまり。

「理想の物流体験を社会に実装する」をMissionとした国際貿易、国際物流の領域をアップデートを手掛けるスタートアップShippio

2016年に創業し、昨輸出入のあらゆる手配を一気通貫するフォワーディング業務と、大量の書類や情報を一元管理するソフトウエア開発を行っています。

シリーズA10億円の調達を達成し、ここからさらに拡大していくタイミングで、組織の強い指針となるVision/Mission/Valueを構築するプロジェクトがスタートしました。


ShippioとGoodpatch

Shippioのファウンダーはもと三井物産の佐藤孝徳さん。そして共同創業者に同じくもと三井物産の土屋隆司さん。

Vision/Mission/Value構築プロジェクトのデザインパートナーにはGoodpatch

運命的なご縁でShippio土屋隆司さんと、Goodpatch土屋尚史さんが、高校の同級生で同じ部活。数年前から、いつか一緒に仕事ができたらという話があったらしく、調達を期にそれが現実となりました。

高校時代の思い出  Naofumi Tsuchiya / Goodpatch


Vision/Mission/Valueの重み。

Vision/Mission/Valueは会社の根幹。
困難な時でも倒れずに走り続けるため、組織が同じ方向を向いて力を合わせるため、より高みをめざすため、あらゆる場面で指針となります。
Goodpatchも組織が不安定な時に強いVision/Missionに助けられました。

そんなShippioの10年先まで決めてしまうかもしれない重要なものを、たった数ヶ月で。しかも外部パートナーの人間が作るなんて…. と、身の引き締まる思いでした。


国際物流の世界

国際物流という普段の自分とは遠くかけ離れた世界の話。ゼロ知識の状態から短期間でキャッチアップし、経営者と同じ視野と視座を持って会社の未来について考えなければいけません。毎プロジェクト必ず通るこの超絶インプットフェーズは、苦しいけど知らなかった新しい世界を知れてとてもワクワクします。

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↑当時のSlack一コマ

ちなみに、私はBtoB案件に関わることが多いのですが、BtoBは事業を通して社会や世界をより身近に感じることができ、複雑だけれど壮大でとてもやりがいを感じます。これ成功したら超世界変わるんじゃない?こんなすごい事業に関われるなんてありがたすぎる...!といつも感じています。デザイナーはtoCを好む傾向にあるようですが、BtoBデザイナーもっと増えて欲しい....

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↑当時のSlack一コマ

創業者の想いに向き合う。

Shippioの2人の創業者が、なぜ10年も勤めた三井物産のキャリアを捨てて起業をしたのか。なぜ国際物流という壮大で困難な領域にチャレンジしているのか。それぞれにお時間をいただいてお話を聞きました。2人とも想いは同じでした。

『国際物流業界は、50年以上も大きな変化が起きていない。早急に改善すべき重い社会問題を抱えているにもかかわらず、既得権益が強く変わろうとしない。解決にはとても時間がかかるし一筋縄ではいかないこと。みんなやらずに避けてきた。誰かがやらなければ後何十年もこの業界の不幸は変わらない。だから自分たちがやる。』

これを聞いてとっても感銘を受けたと同時に、怖さもありました。この人達は「Shippioがなかったら、日本ヤバかったよね」という未来を作ろうとしています。もしプロジェクトで成果が出なかったら、何も価値を残せなかったら…..。大袈裟かもしれないけど、業界の変化が5~10年遅れるかもしれない。救えたかもしれない人が、10年先も不幸なままかもしれない…..。と、心臓が止まりそうでしたが、私が感じるプレッシャーの何千倍もの責任と覚悟をもっているんだ...。と思うと私自身の覚悟の質もさらに上がりました。


心を揺さぶる想いとは。

この人達の素晴らしい志が、どうしたらもっと世の中の人に伝わるだろうか。どうしたら、Shippioの社員さんたちがこの会社で働いていることに誇りを持って前進できるだろうか。

正しい論理だけを振りかざすだけでは人は共感しません。しかし、強い想いだけで夢を語り続けても、いつまでも形にならず次第に人は離れて行ってしまいます。意識したのは「合理と情理」で構造化してゆくこと。

自己と他者との関係性の状態に、合理関係・共感関係というものがあります。この2つがバランス良く両立させることで、より多くの人に想いが届くのだと思います。ロジカルにエモく。戦略的かつ感覚的に。

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Shippioのコアを見つけて価値を整理する。

Shippioや物流業界そのものを客観的かつ正しく捉えるため、創業者の2人だけでなくShippioメンバー、パートナー企業、株主、荷主さんなど、様々なステークホルダーにインタビューさせていただきました。

Shippioを取り巻く環境や状況を、内側と外側から解像度を上げるため業界のリアルな状況、Shippioへの期待、信じていることなどを紐解いてゆきます。

そして点となるFACTをたくさん集めてShippioの大義とつなぐ。
今この時代に、この業界で、この人たちにしか出来ないことが一本のストーリーとして繋がるように。本質をとらえ、人に共感される言葉で語ること。

これができればもう、誰もが応援したくなる唯一無二のブランドになるはず。アウトプットはいろんな切り口から。

1. 業界の負に向き合う
2.物流体験、を紐解く
3. 変わらない想い、原体験を探す

1. 業界の負に向き合う
国際物流の輸出入のフローはとても複雑。どれくらい複雑なのか、Shippioのフォワーダーの大田さんに協力してもらい、国際物流のフローを可視化しました。

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こんなにも複雑なフローにもかかわらず、デジタル化が遅れ煩雑で非効率。
その結果、流通フローに品質の差が生まれず価格で選ぶ世界に。「届いて当たり前、ならばなるべく安く。」という考えの循環によって、価格競争に陥り業界環境に悪循環が生まれています。

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最初のヒアリング時から話には聞いていましたが、このように実態を構造化・可視化することで、業界が抱える課題をリアル感じられ、重々しく受け止めました。

2.物流体験、を紐解く
理想として目指すのは「価格」ではなく「価値」で選ばれる物流。「安心・安全・必ず届く、はあたりまえ。どれだけ安く運べるか」
という価値観を変えていくことが必要です。

鍵となるのは物流に「体験価値」を加えること。

Shippioは国際物流の複雑なフローを簡略化するソフトウエアを開発していますが、ループからも分かるように従来の作業を単にテクノロジーに置き換えるだけでは片手落ち。それによって生まれる付加価値とは?どんな可能性に繋がるのか?と思考を発散させて整理していきます。

流石に全ての内容は載せれないのだけど、当時こんなことを考えてました。

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この日のMTGは本当に遣隋使から始めました。笑

遣隋使

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この日の議論はチームの視野がとても広がった感覚があり、これをやり切ったら本当にすごい未来になりそうだ!と盛り上がったのを覚えています。Shippioの歴史の一部になれた気がしてとても嬉しかった。

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↑今日が歴史が動いた日になるかもしれない!と、わいわい撮った写真

3. 変わらない想い、原体験を探す

Shppioは創業から何度かピポットしており社名も1度変わっていますが、ビジネスモデルは変わっても、国際物流という大きなテーマ変わっていません。

なぜ、苦い思いや経験をしているのに同じ領域でチャレンジをし続けているのか、諦めずにやり続けられるエネルギーはどこからくるのか?を探るため、過去を振り返ります。現在は過去の積み重ねなので、過去を紐解くことで変わらない芯の部分が見つかるはず。(2人の判断軸や価値観を知るため、三井物産の理念や社風を調べたりも。)

起業のきっかけは、物産時代に目の当たりにした中国の凄まじい経済成長。
中国の優秀な若者がすさまじいスピード感で事業にチャレンジしているのを見て『自分達もこのままじゃいけない』と思ったそう。

しかし現在では2人とも、そのギャップを埋めることよりも、日本社会のため・世界のためにという目線でで事業をしています。普段のMTG中の会話の中でも、その視座の高さにいつも感銘を受けていました。『決して自分たちだけが成功したいのではなく、業界全体を巻き込んで変えていきたい。そのムーブメントを起こしたい』と常におっしゃっていたのが1番印象的でした。

当時、私はその視座の変化が不思議で、「どうして視座が一段上がったんですか?きっかけはなんですか?」

と質問しました。でも帰ってきたのは予想外の答えでした。

『物産に入った時点で、業界や社会、世界ごとで考える仕事をしていたから常に感じてた課題だった。中国でのことは起業のきっかけだけど想いはずっと前から持っていた。』

佐藤さんに誘われた土屋さんも、迷いなく「明日、会社辞めるって言えばいいですか?」すぐに起業に賛同したそうです。※

Shippioの創業当時の社名はサークルイン。中心から光が広がって全体をに広がり転換する動きのように、業界の中心から広げ、世の中を照らしていけるように。という意味。

ああ、そうか。創業した時から、むしろもっとずっと前から2人のこの想いは変わってないんだな。と、スッとふに落ちた感覚がありました。

※Shippio佐藤さんによるストーリーはこちら


思想を言葉にする。

これまでたくさん引き出して、整理してきた想いや事実の出来事を言葉に着地させます。言葉の研ぎ澄ましはHolmesのプロジェクトでも並走していただいたコピーライターの北野さんに入っていただきました。

言葉の細部には「Shippioらしさ」が乗るように。端的に的確に表現するために、「どこまでの視野で、どの視座で」をこだわり抜いて何度も検証しました。Vision/Missionは合言葉やキーワードではありません。この言葉をきっかけに、自分たちの思想や価値観について都度自分の言葉で語っていくものとなります。

終盤は「面接や会社説明の時にこの意味について聞かれた時、なんて答えますか?どんな言葉で語りますか?」と問いかけ、自分の言葉で話せるか確認しながらブラッシュアップしていきました。唐突に「今から録音するんで、スピーチしてください!」なんてやりとりもしました。笑

着地したVision/Mission/Anchorsは、Shippioの視野と視座、そして覚悟がよく現れたものになりました。

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Shippioが立ち返る場所としてのアイデンティ。

Vision/Mission/Anchorsを定める過程で見えてきた、言葉だけでは語りきれないたくさんの想いやストーリーをどうにか他の形でも残せないかと考え、VIも新たに別で提案させていただきました。

ロゴやビジュアル、プロダクトの機能ひとつまで、全てのアウトプットはVision/Missionから繋がり生まれるものであるべきです。それであれば、ロゴやカラーの意味について説明する時は、そのまま自分たちの事業やスタンスの話ができるようなものが理想。計算されて作るのなら、検算もできるはず。そのような想いからVIにShippioの2016年からのストーリーを当てました。

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ロゴを見るたびに、地球の真ん中にある地軸と業界のど真ん中から世界を前進させようとしている自分たちを重ね合わせてほしい。

真っ青なブルー見るたび、カラーコード#000665を打つたびに、困難な時でもその先に必ず輝く価値があると信じて勇気を持ってほしい。

Circle Inのモチーフを見るたびに、企業名を決めるためホワイトボードの前で何時間も物流業界の未来について2人で話し合ったこと、その時の想いは今も変わっていないことを振り返ってほしい。

年月が経っても、困難なことがあっても、常に目に触れるこのビジュアルたちが、Shippioの立ち返る場所を思い出させてくれることを願っています。

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BXデザインとは何なのか。

少し個人的な話をします。

3年前、広告業界にいた私は「長く愛されるデザインを作りたい」という想いでGoodpatchに転職しました。当時はそれが、プロダクトやサービスそのものだと思っていました。

どんなデザインを作りたいの?と聞かれた時によく答えていたのは「最終アウトプットにこだわりは無いです。紙でもデジタルでもなんでも。」今でもそれは変わらないし、実のところ未来の夢の状態を考えたりモノにする一歩手前の思想を扱う部分が1番好きです。

これが「上流」でも「ビジネス」でも「戦略」でもない。なんと呼んでもしっくりこなかったのですが、今では「Vision」という言葉が1番しっくりきています。そしてBXデザイナーとして1年ほど経った今、様々な案件を通して「Visionを持っているのはヒトだ」ということを知りました。

Goodpatchにはいろんなデザイナーがいます。
モノにこだわりを持ってプロダクト作りを追求するデザイナー、コトに向き合い事業全体を見ているデザイナー。そして私は、Visionを持ったヒトに向き合いたいんだと思いました。

これまで一緒にお仕事させていただいたスタートアップの経営者や事業オーナーはみな強烈なVisionを持っていました。それと同時に、「自分以上に先が見えている人は他にいない」という孤独と闘っています。

そのような人たちと一緒に、デザインの力でVisionを可視化したり、想いを構造化したり、より多くの人に伝わるようなツール作る。もっと長く、遠くまで走れるようにエネルギーを届ける。これが、BXデザインなんだなと今は解釈しています。

デザインの力で前進する人を増やしたい。

デザインの力でできることは本当に多い。最高のプロダクトを作ることも、今回のように強い想いをいろんな形で残すこともできます。

国際物流の専門化でなくても、フォワーディング経験がなくても、関わりのなかった業界でも、様々な角度から整理し構造化する。それによって新たなな視点や発見があり、前に進もうとする人をさらに前進させることができる。これもデザインの持つ力であり、デザイナーができることの一つです。

ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる。

これはGoodpatchのVisionです。私たちがお仕事させていただくクライアントは皆、素晴らしい志を持ち世界をより良くしようとしています。そんなクライアントにデザインの力を届け、背中を押す。そうすることで世界が前進する。こうして私たち自身もVisionに近づくことができると感じています。

世界の、素晴らしい志を持った人にデザインの力を届けたい。そして一緒に世界を前進させたい。これが私のやるべきことであり、やりたいことでもある。そしてこれができる環境にいられることに、とても感謝しています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。Shippio、Goodpatch、そしてBXデザインに興味を持っていただけましたら幸いです!。ぜひご連絡もお待ちしています✉️💙!

Tシャツ

↑おまけ。ノベルティとして提案したシッピオTシャツ。イベントで大人気でした!

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BX designer / @GoodpatchTokyo クライアントワークでV/M/V構築、本質価値の深掘り、Brand identity構築、カルチャー浸透支援、ロゴ、VIデザインなど...インナーアウター両輪で企業のBrand Experienceをお手伝いしています。

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コメント (1)
すごくいい記事でした。
BXについてあまり考える機会がなかった自分を恥ずかしくなりました。
「デザインの力でVisionを可視化したり、想いを構造化したり、より多くの人に伝わるようなツール作る。もっと長く、遠くまで走れるようにエネルギーを届ける。これが、BXデザインなんだなと今は解釈しています。」

仰る通りですね。
そういった理解や整理がおこなわれてはじめてデザインにおこすべきなのに、しかるべき工程を省いて納期を最優先してしまった仕事はこれまでも何度もありました。
それはデザインを軽視している人たちからデザインの仕事を振られることに起因しているのかもしれません。
しかし、そういう人たちに、デザインの手前にある工程の意味をハラ落ちさせられるように説くのもクリエイティブを担う側の役割なんだと痛感しました。

鍵となるのは物流に「体験価値」を加えること

価格重視になっている物流の業界構造を塗り替えるのは非常に困難が挑戦だと思いますが、応援したくなりました。
価格以上の体験価値が業界にもたらされることを楽しみにしています。
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