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「とおるさんの本屋」 はらまさかず

とおるさんは、月に何度か、透き通ります。
そんな時は決まって、何かお話をつくりたくなるのです。
たとえば、ひどく雨が降っている時には、世の中から水害がなくなるお話。
今はできないことでも、お話をかんがえているうちに、いずれできるような気がしてきます。

夢想しているうちに、透き通っていたとおるさんは、元に戻っていきます。
とおるさんはできあがったお話を、紙に書き、本をつくります。そして、一冊しかないその本を、ひっそりと、自分の本屋さんに置くのです。

外は大雨。
明け方の誰もいない町で、とおるさんは店を開けました。
開店時間は1時間だけ。
お客さんは誰も来ないはず。
ところが…

お客さんが来て、とおるさんの本を買っていったのでした。

とおるさんの本屋には、もう一つ、「よあけの書店」というお話があります。
「#とおるさんの本屋」で検索できます。

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