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「ハリネズミのお母さんは痛くないの?」 はらまさかず

「ねえ、ハリネズミってさあ、どうやって生まれてくると思う?」
マスターがきいてきた。
「なに、それ?」
「ハリネズミってさ、ハリがあるじゃない。お母さん、生むとき大変でしょ」
「生まれてから生えてくるんじゃないの?」
「お母さんのお腹のなかにいる時には、もう生えてるんだって」
「ふーん」
ぼくは、考えた。
どうやって、ハリネズミは生まれてくるのだろう。
「あのね、ハリネズミって、生まれる時、うすい皮膚でおおわれてて、生まれるとその皮膚を突き破ってハリが出てくるんだって。そのハリもね、初めはやわらかい毛なんだけど、すぐにかたくなるんだって」
マスターがいった。
「ハリネズミって、えらいね。みんな、お母さんを思いやって生まれて来るんだ」
「そう。思いやりのない子は、生まれてこれないわけよ」

「なんで知ってるの?」
「ラジオでやってた」
「ふーん。
人も、きっと同じなんだろうね。
人を思いやることが、生まれるための条件」
ぼくがいうと、
「うん。生まれてからも、きっと。
人を思いやることが、生きるための条件」
マスターがいった。

(喫茶ギンガ 第12話)

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