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「帰ってきた おにぎり」 はらまさかず

ぼくの住んでいる町には、太った野良猫がいます。
どうやら、このあたりのボス猫らしく、ほかの猫たち、
いえ、それだけじゃなくて、近所の犬やカラスたちまでも、
この太った猫には一目置いているようです。

よく電柱にもたれて、だらしなく寝ている猫ですが、
このあたりでは、この猫について、不思議なうわさがあります。
それは、このボス猫に、行方不明になった猫の特徴を言うと、しばらくして、逃げ出した猫が帰ってくるというもの。
そんなことって、本当にあるのかなあ。

それから、しばらく。
ぼくの友達の家の、若い黒猫が、逃げ出したまま行方不明になりました。
それで、ぼくは半信半疑ながら、あのボス猫に会いに行ったのです。

「まだ1才になっていない黒猫で、目は黄色。逃げ出したのはひと月前で、飼い主は一人暮らしのサラリーマンなんだ。名前は、おにぎり」

ぼくは、ボス猫にいいました。
猫はきいているのか、いないのか、だまったまま。
ま、帰ってくるわけないか。
と思った、その夜、友達から電話がかかってきました。
「今、おにぎりが帰ってきたよ!」

自分から、マンションのドアをノックしたんだって。
あのボス猫、すごいなあ。

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