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【逗子葉山よむ料理店】#4 つく志の、街に愛され続けるアジフライ
逗子がまだ「逗子町」だった昭和26年、今と変わらぬ場所で暖簾を掲げた。
以来70年、4人の主人によって店は守られてきた。
いつの日も変わらず、美味しい料理とお酒を楽しめる場。
その存在が、この海街に暮らす人にとってどれだけ安心感をもたらし、日々の息抜きになってきたのだろう。
「今はお客さんと会えなくて素直にさみしい」と店主の藤枝浩司さん。
寂しげな表情と、優しそうな笑顔が印象に残った。
サンサンゴゴの佳織さんが紹介してくれたこのお店は、街に愛され続けている逗子の名店。
他愛もない会話と笑い声が似合う。
そんな「つく志」のものがたり。
つく志
住所:〒249-0006 神奈川県逗子市逗子5-1-22
電話番号:046-871-2914
https://www.facebook.com/zushi.tsukushi
*テイクアウトなどの最新情報は、店舗のSNSをご確認ください。
つく志が街に、愛され続けるその理由。
JR逗子駅と、京急逗子・葉山駅の中間あたり。入口横の半開きにした窓から揚げ物の香りが漂う。
昼時には近くのサラリーマンやおじさん、おばさんたちが吸い込まれるように暖簾をくぐっていく。
ある人はいかにも満腹という様子。
ある人は少し顔を赤らめ、さっきよりも陽気に店を出る。
そう、ここは昼から呑める古き良き食事処。そして昼の11時から夜11時まで、通しで営業している数少ないお店。
昭和と平成を経て選び抜かれたメニューは無駄がなく、風格さえ漂う。
「昔は年齢層高かったけど、最近は若い子もよく来るよ」
ちょっと怖い人だと思ってたけれど、話してみたら優しい人だった。
そんな藤枝さんのようなお店だから。
昔も今も、この街の人たちはつく志に魅了されてしまうんだ。
そんなつく志の料理は、どれも新鮮で、丁寧な味わい。
新鮮な魚介類は、近所の老舗鮮魚店「魚佐次」から毎朝仕入れる。
野菜も逗子生産直売所で、農家さんから直接買い付けるのが開店前の日課。
地場と旬。
それを活かすために、調理や味付けはできるだけシンプルに。
潔く、奥深い。だから通ってしまう。
朝の仕込みが終わっても、板場で常に手を動かしている藤枝さん。
人気メニューのアジフライのため、1日50匹ほど捌くという。
「今でも毎日、切り方は工夫してる」
繰り返しではなく、試行錯誤の連続。
「良いアジが入ると嬉しくなっちゃうんですよね」
よく切れそうな小ぶりの出刃包丁を手にポツリとつぶやいた。
70年もの積み重ね。こうしてつく志の料理は街にとって無くてはならないものとなった。
店内にまたあの笑い声が戻ってくる、その日まで。
「つく志」は父が好きな店だった。
お酒を飲める年齢になってから、よく誘われて酌み交わした。
いくつかの飲食店で経験を積み、先代の娘さんと結婚。30歳の時にこの店の厨房に立つことに。
5年後、気がつけば自分がこの店の主になっていた。
「振り返ると、流れに身を任せてるだけだな」
頭をかきながら笑う藤枝さん。
でもその表情は充実している。
日々の小さな営みの積み重ねがそうさせる。
2人の子どもがひょこっと入ってきた。
「うちにあと4人いるんですよ」。
礼儀正しい2人を見送る顔は優しい父親そのものだった。
「今日はやってるの?」
取材中、通りがけの人たちが声をかけてくるたび、藤枝さんは申し訳なさそうに断っていた。
「今、店内は午後2時まで。残念そうなお客さんの表情を見るのがつらくて」
手入れの行き届いたヒノキのカウンターも心なしか所在なさげだ。
刻一刻と変わっていく状況に、店としての対応も考えあぐねている。
でも悪いことばかりではない。
「今まで以上に、来てくれた人に『ありがとう』って、心から言えるようになって」
当たり前の毎日が、いかに価値のあるものだったか。
立ち止まって気づく機会になった。
「成り行きでこの店の4代目になったけど、最近ようやく自分の店になったという気がするんです」
そう話す藤枝さんの表情からは、何か決意のようなものが読み取れる。
「落ち着いたら、くだらない事でも話しながらお客さんと乾杯したい。そのために何とか乗り切りますよ」
何気ない日常が戻ってくることを、誰よりも強く願っている。
あのアジフライを家庭で。捌き方や揚げる時のコツを教わりました。
藤枝さんに教えていただいたのは、人気メニューのアジフライ。
このアジフライが、人生で一番の味と、街の人が熱心に語る味。
「レシピっていうほどのものでもないんだけどなぁ」
そう言って、どんどん作業を進める藤枝さん。
ちょっと待って。
手さばきが良すぎて追いつきません。
ということで、一つ一つの工程をじっくりと教えてもらいました。
家で過ごす時間が多い今こそ、自宅で魚を捌くのにピッタリ。
少しくらい背骨に身がついても大丈夫。
フライにすれば、美味しく食べられます。
これから旬を迎えるアジ。魚佐次で買い、自分でもアジフライを作れるようになれば、この街がもっと好きになるはず。
あのカウンターでまた食べられる日まで、あの味をご家庭で。
このレシピの購読料824円(「ハ」ヤマと「ズ」シを「ヨ」ム)は、全額をつく志さんにお渡しします。応援の気持ちを込めて、ぜひ読んで、つくってもらえたら嬉しいです。
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