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下手くその力

『らも 中島らもと三十五年』
中島 美代子
出版社:集英社

中島美代子は中島らもの奥さんである。中島らもは作家だが、中島美代子は素人だ。
中島らもの破天荒な生活は、彼自身の著書に「プロの筆で」描かれているが、同じ破天荒も素人の筆で描かれるととんでもないことになる。

素人は嘘が下手。
素人は加減を知らない。
素人は暴走する。

結果、この本は生々しくえげつない、ある意味名著となった。
中島らもがプロの筆で綺麗にまとめてきた事どもが、全部おっぴろげに、情け容赦なく書き尽くされている。
いや、彼女なりに隠そうとしているのだが、下手くそだから隠しきれずに、余計に行間から色んなものが顔を出してくるのだ。

僕は今でも作家として、売文家として、中島らもを敬愛しているが、これを読めば「知り合いじゃなくてよかったのかも」とさえ思う(笑)。
ほんと、無茶苦茶。たまらん。
あ、でも大好き。

僕は中島らもは昔から好きだが、相方(?)のわかぎゑふが、どうにも好きになれなかった。
リリパット・アーミー2の彼女の公演をNHKで観て、なんでこんな古色蒼然な芝居をする人が中島らもと組んでたんだろうと訝っていた。文章もちっとも面白くないし。

中島らもとわかぎゑふの関係について、あらかたの疑問が氷解。
そういうゴシップ的興味からも飽きさせない本です。
思い知れ下手くその力。

(シミルボン 2016.9)

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