見出し画像

「膝カックン」的カタルシス

室町小説集』
花田清輝
講談社


なんだろうこれは。
読みながら呻いていたことは覚えている。なんだろう、なんだろう、と思いながら、急峻な崖を登るような読書をする。
史料と伝説についてのくだくだとした思索の中から突然浮上して走りだしてはまた埋もれていく物語。
物語の尻尾を追って深山の奥に分け入れば、後南朝の後裔にまつわるドタバタ劇から、さらに呆気にとられる衝撃の結末まで・・・・いや、もう説明はすまい。

とにかく一筋縄ではいかない物語である。
だいたいからして、縦横に張りめぐらされる史料の網じたいが、実在の史料であるとは限らなそうなのである。
花田清輝の手のひらで弄ばれつつ、ふつうは考えられないような場面設定で突然現れるカタルシス。
カタルシス?・・・といっていいのだろうか。
「膝カックン」的なカタルシスなのだが。
そう書いても読まなきゃわかんないよなぁ(僕は唸りましたよ)。

万人におすすめできる小説ではないが。
急峻な崖から、膝カックンのクライマックスまで、根気には自信があるというあなたにおすすめしたい。
僕はこんなの、初めて読みました(笑

(シミルボン 2016.9)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?