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Relaxing sunday afternoon.

 暖房も冷房も不要、ただ開け放った窓から自然の風が入り込む。くたくたに着馴染んだヘインズのコットンTシャツからむきだしの腕にその風が柔らかく当たる午後、もうそれだけで充分、と思ってしまう。
 さらに快適を求めるなら、今年初めてのアイスティーを淹れよう。昔、何からも守られていて完璧に安全だと信じていた幼かった頃、夏の始まりを知らせるのはいつも、カランコロンと良い音のする氷たっぷりの甘いアイスティーだった。
 紅茶も好きなのに家で滅多に飲まなくなったうえ、アイスティーは本当に年に数回、気分がとても良い凪いだときに淹れる飲み物になってしまった。おそらくは過去の幸福な気持ちと密接につながったアイテムとなっていることで、自分のなかでそういう気持ちになっているときにしか求めなくなったためだと思う。

 一週間のうちで一日、せめて一日だけは、一歩も外から出ない日がほしい。そればかりか、誰ともひと言も話さなくてよい日。これはもう、一人暮らしだから叶うことであるが、普段仕事柄、目覚めている間はコミュニケーションを戦略的に駆使するために、一切のコミュニケーションから解放されたいと思ってしまう。
 日盛りの日曜の午後の陽ざしを薄く開けたカーテンの向こうに感じながら、カラコロとグラスに氷のぶつかる音がノスタルジックなほど平和に思える。

 遠い午後、いっときもじっとしてなどいられなかったあの時代に、この時間はもっとも涼しい日陰になる部屋で、母が「さあお昼寝の時間よ」といって、姉妹みんなして並んで横になったものだ。けれど眠くなんかないし、横になってもいたくないので、じりじりと暑い太陽の下に飛び出したい衝動を抑えることが難しかった。

 傍らに放っておいたグラスから、溶けた氷が揺らめいて音を立てる。グラスはびっしりと玉の汗をかいて、琥珀色の液体がとろんと波打った。

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