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ベッドルームへの帰還
とうとうベッドルームで就寝できる気温になった。なんのこっちゃ、という話であるが、2DKの古い住まいで寝室にはエアコンがない。真夏はそういうわけで寝具を移動してリビングというかメインの居住スペースで寝るようになってしばらく経つ。その場合ベッドではないので、マットレスを工夫していくつか重ねたりしてひと夏を過ごすわけだが、「安心させてまたぶり返すんでしょ?」と、例年にない涼しい9月の始まりをまだまだ疑心暗鬼で睨みを利かせていて、ベッドルームへの帰還をためらっていた。しかし、どうももういいでしょ、これは。
久々にベッドで眠ると驚くほど深く眠れて、夜中一度も起きることがない。ベッドは特段に高性能ということはまったくなく、言ってしまえば大学入学時に始めた一人暮らしから使い続けている相当な年季の入りようなので機能もなんもありゃしない。それにも関わらず、この睡眠の充実ぶりにはさすがの寝具様だな、と驚いたのだった。
自分にとってベッドに帰還できたことでもうひとつカムバックできた喜びがある。それは、ベッドにクッションの係累を積み重ねてよりかかってくつろぐことだ。ポイントは、体調があまりよくないときなど、この係累にもたれかかってノートPCを膝に置けば、ほとんど寝たまま仕事ができる。これは意外にも非常に効果的で、自分など体調がよくないときにベッドから起き上がることが非常につらい性質なので、ともすると延々と仕事の開始に影響してしまう。それが、えいや!と一度起き上がってリビングからのろのろとPCとコーヒーだけ持ってくれば身体に負担なくベッドで寝ながら仕事ができるわけだ。
これは罪悪感の緩和にも一役買う。いくら体調がよくないといっても、仕事の手を止めて休んでいることはモーレツ会社員世代の残り香を強く持つ自分にとってとても心を苦しめることになる。けれど身体はついてこない。そんなとき、あらカンタン!いともたやすく解決してしまう。
もうひとつある。それは週末のお楽しみである。
自分は元来が非常に根暗でひきこもり体質なのに、社会人となって社会人の真似事をしているため、平日は膨大な数の人と話をしたり会ったりしないとならない。職業柄であるが。そうするととっても疲弊するので、土日のいずれかは誰とも会わず口もきかず、完璧な一人の世界に没入しないと翌週の充電が適わないのだ。それなので、遅く目覚めた土曜にたっぷりとコーヒーをつくってベッドサイドにセットし、クッションの係累を築いたらそこで思うように気ままに過ごすことでだいぶストレスが軽減されて、自己回復ができるのだ。
え、そんなのリビングのソファでいいじゃん、と思うかもしれないが、自分にとってリビングに出向くのはもう日常なので、非日常としっかり区別するには「ベッドで怠惰」を完全に決め込むことが既に休日の背徳感を伴えてよろしい。
ちなみに本日は既にベッドで仕事を実践している。なんせ、昨夕にあまりに眠くて何も掛けずにうたた寝をした結果、早速風邪をひいてしまった。しかし、「大丈夫。ベッドにPC持ってくれば解決!」と心浮きたつような感じでベッドまわりに必要なものをセッティングした。
こんなとき、ふと脳裏に向田邦子さんが「一人暮らしの女は、日ごろだらしなく生活していると人と会ったときに知らずとそれが出てしまうものだから、普通の日こそしっかりきれいに生きなくてはならない」みたいなことをエッセイに書いていらしたのを思い出さないわけでもない。
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