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強い風が吹くとき

冬が最後の追い込みをかけて、やわらいだ陽射しに来たる季節を恋しがるのを幾度もくじけさすけれど、確実に空気の粒子が変わってきたのが感じられる。冷たい風のなかに、微かな春の訪れを予感させる。

春も晩春となれば、気配を濃くして夜の闇のなかでそれは育ち、樹々が大地が日ごとに生命の匂いを力強く放つものだから、こちらとしてはやや恥じらいつつ気おされなくもないのだが、まだ2月の風ともなればそれは極めて淡く楚々としている。

光が跳ねて空気が躍る。笑みがこぼれるように花が次々と開き、我々人間といえばその全力のリズムにわずか遅れるようにして、ようやっと凝り固まった身体を開き手足を伸ばしていく。血液が爪先まで巡り、頬に自然の紅がさす。

いつも早い春の訪れのときは、強い風が吹いていた。

虚飾を一掃するかのような容赦のない風が吹きすさんで、剥離したままこびりついた古い細胞を祓っていく。

そうしてむき出しの自己に幾度も立ち向かっては、1年に1度の強い風を待っている。photo by Geishaboy500

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