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ダイアモンドの顔したけやきの木の涙

物足りないのだ。こんな晩秋では。

過ぎる季節を惜しむことすら叶わない。惜しむほどに、深い秋を感じさせてくれることなしに、あのつらく重苦しい季節に移り変わってしまうのか。

否、ちがうのだ。おそらくわたしの問題なのだ、これは。

身も心も焦がすようにして夏を過ごした者だけに、秋は深く語りかける。鬱々としてひたすらに冷房が刺さるように効いたあの部屋で、背を丸めて胎児のように現実から逃げ続けたわたしに、透明な冷却水のようにして目を覚まさせてくれる風が吹かなかったのだ。

あなたの真の美しさを、この細胞すべてで感じることをなく、ただ見送らなくてはならないのがほんの少しかなしい。

そうしていつも、小さな意味のない抵抗を身の内に抱えながらふつうの顔して生きていくわたしです

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