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「虚構」にある温度

地下鉄銀座線、A12の出口から松屋銀座へとつづく回廊はひとときのアートを楽しむことができる場所だ。ショーウィンドウに物語が展開され、一歩進むごとにきらびやかな夢の世界が目の前に現れる。

かつて銀座に職場があった頃は、毎日終電間近に疲れ切った体をやっとのことで電車に押し込むべくこの回廊を歩いた。そうすると、翌日から新しいファンタジーがお目見えする前夜、ウィンドウをディスプレイする人たちの作業が間近に見ることができた。

美しいものも、夢の世界も、人の手によるのだ。

という事実を体感させられるこの光景を眺めるのがわたしはとてもすきだった。その職場と縁遠くなってから、銀座からも足が遠のいてしまったけれど、今でも百貨店のシーズナリー・ディスプレイを眺めるのは気に入りの時間だ。

ブランドの世界観というのは、受け継がれつつも革新性に富んでいて、そのとき最新の流行を体現している。そしてやっぱり、そこはかとない夢の色にふちどられているその様子は、つかの間見る人のこころにエナジーを注入しているような気がする。ささやかに、生きる力を。

これから空気がさらに澄んでいって、息も凍えるほどになると、一層のことイルミネーションは美しくきらめく。

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