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一度死んで生まれ直した日

毎年忘れることなく意識してきた6月4日という日であるが、今年においてはついさっきまでまったく忘れていた。そのくらいの時間がたったということだろう。わたしの二度目の誕生日だ。

現在も苦しい闘病をしている人もたくさんおられるなか、自分は実際そこまで生死を賭けたものでなかったのだろうが、それでもステージ3のがん治療では自分なりに生死を非常に意識した日々だった。標準治療と言われる手術、放射線、化学療法のすべてを行ったが、その手術をしたのが8年前の今日だった。要するにやっと8歳を迎えたわけだ。

病巣を切り取る。それが手術であるが、二つの点において大きな変化を体験した。まずは身体的なこととして、当たり前に存在していた臓器を摘出したこと、それによる後遺症。また、開腹術が影響したのは病巣付近周辺部だけでなく、神経にも影響を及ぼしたのでいくつもの後遺症を今に至っても共にしている。しかし、見た目にわかるものはほとんどない。もう一つが生き方の抜本的な変容だ。いや語弊があるな、結局8年経った今、生き方はたいして変わってないじゃないかとも思うからだ。

死生観が変わったことで、病前の人生を大きく反省することができた。それまでは「どんな結果もそのとき悩んで真剣に出した答えからであれば、自分も人も傷つけたとしても甘んじて受け入れる」という考えが主であったが、「自分も人も、極力傷つけない方法」を模索するようにはなった。見た目の肉体に抱える不具合が人目にはわからないのと同じく、考え方における意識の変化についてもあまりにも細かい部分なので目に見えるものでもないのだが、これらの変容によって自分は大きく、第二の人生を始めたと言い切れるのだ。

あれからいろんなことがあったし、変化は継続して進行形を生きている。忘れがちな当たり前のように生きられることへの感謝を、今日この日だけは忘れてはならないと自戒する。

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