201号室のカイコ
月曜日。USJから帰ってくると、同居人が煙草を吸っては天井に向かって赤い糸ばかり吐いている。毛細血管みたいに糸の厚く張り巡った1Kの部屋は、南国の果物をなすりつけた薪を焚べたような、いらいらとした甘い匂いに満ちている。
「このところ気が多くて。誰と繋がってるんだか、気が気じゃなくて」
溜息を吐きながらお土産のぬいぐるみを弄び、同居人がつまらなそうに放り上げた。赤い網掛けが大きくたわみ、糸に貼り付いたミニオンボブがにっこりとほほえみながら、いつまでも上下に揺れている。
もう終わっちゃったんですね。行ってみたかったなぁ。
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