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2021.6.21 鳥貴族とオムライスと壁について

 昨夜は表現者のたまごが集まるイベントに顔を出してきました。参加者はみんな20代の、役者やダンサーばかり。なかには高校生までいました。一人浮いているおじさんは静かに気配を消していました。最近のアートイベントや演劇の宣伝力の弱さについて話し合って、盛り上がったところでお開きとなりました。楽しいイベントでした。
 解散後、安定の鳥貴族で美術家のMさんとお話をしました。Mさんとは彼女がまだ高校生の時に、あるアートイベントで一緒になってからちょくちょく顔を合わせる仲です。メガハイボールのグラスを持って豪快に喉を鳴らしている姿を見ると感慨深い気持ちになってきました。大きくなったな、娘よ。思えば、こやって膝を突き合わせておしゃべりするのは初めてだったかもしれません。個人的で刺激的すぎる体験談が多かったので詳細は省きますが、夢日記や西洋美術や『ハーメルンの笛吹男』や自殺や家庭環境が子供に与える影響などについて、店を追い出されるまで延々話し続けました。あっという間の四時間でした。またおしゃべりしましょう。

 翌日。お昼になって猛烈にオムライスが食べたくなりました。なんなんでしょうね、あの猛烈に××したくなる感覚。食べに行ってもよかったのですが、貧乏人なので自炊することにしました。一人暮らしをしていたころ、テレビで見たふわとろオムライスの影響でオムライス作りに熱中していた時期があります。理想のオムライスに近づくため、一日2回オムライスという日もありました。結論として、家庭用コンロでは火力の関係で理想のふわとろ具合は難しいという結論に至りました。その日から、料理がうまくいかないときはすべて火力のせいしています。

 ぐちゃどろオムライスを食べ終え、日課のnoteを書くためにパソコンを開いたところ、友人がTwitterにアップしたかき氷の写真が目に飛び込んできました。〝猛烈〟に囚われたぼくはコメダ珈琲に向かいました。自慢ではありませんが、ぼくは前回の健康診断ではコレステロール値の高さを指摘されています。有り体に言えば、「あんた太ってるぞ」ということです。学生時代からずっと60キロジャストをキープしていたのに、ここ二年で家から出る機会が激減して7キロも太ってしまいました。軽い運動で3キロ落としましたが、依然としてぼくの腰や太腿には贅肉はしぶとくまとわりついています。しかし、カロリーの高い食事を1回したからといって、いきなり太るわけではありません。では2回ではどうでしょう。まだ太らないでしょう。よって、数学的帰納法によりいくら食べても太らないことが証明されました。安心して甘いものが食べられるとわかり、ぼくの目の前には生クリームとチョコレート満載のジェリコリッチショコラがあります。数学って便利ですね。

 リッチショコラを片手に、安部公房の『壁』を再読しました。昨日Mさんと話した夢日記で思い出したのがこの作品でした。『壁』は非常に歪で突拍子もない、まるで悪夢のような物語なのです。主人公は朝起きると名前がなくなっています。で、自分の名刺が自分の代わりに会社に行っていて、名前がなくなった陰圧で、欲しい物を目から吸収できるようになっていて、そのせいで窃盗罪の容疑で裁判にかけられ、名前がないせいで過去のすべての未解決事件の容疑をふっかけられ、映画のスクリーンを通って世界の果てに逃げる……といったストーリーです。このわけのわからなさが心地よいですね。いまだに腑に落ちないところだらけですが、大好きな作品です。まだまだ世界には理解できないことがあるのだと思うと、成長の伸びしろを知ってゲロが出ます。

 ぼくは並行して数冊の本を読みます。集中力がないので一冊だけを読み続けるのが苦手なのです。不思議と作品のストーリーがぐっちゃになることはありません。仕組みはわかりませんが、ぼくの頭のなかで明確な線引きがされているようです。今は上記の『壁』に加え、急に読みたくなった太宰治『道化の華』、そろそろ読むかと重い腰を上げたフォークナー『八月の光』、竹内亮の歌集『タルト・タタンと炭酸水』、読書会の課題図書であるエンデ『モモ』夏目漱石『草枕』、ソーシャルデザインの勉強会で教えられた『群れは意識を持つ』、YouTube解説用にバイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』、完全な娯楽用に京極夏彦『魍魎の匣』の計9冊です。多いな。これだけあると、必然、見当たらない本が出てきます。現在、『草枕』と『読んでいない本〜』が行方不明です。ふとしたタイミングで使っていないバッグの中や洗濯機の後ろから出てきますが、忘れてしまっただけでずっと見つかってない本もあるはずです。姿を眩ませた本たちが集まる場所が世界のどこかにあるんじゃないでしょうか、と夢想していたら、あらあらまあまあなるほどどうして2000文字に達してしまったではありませんか。

 いやきっとここまで読んでいないでしょう。それでいいんです、こんな駄文読むよりボケて(bokete)の面白画像を見て笑っていた方がよっぽど有意義です。それでも読んでくださったみなさんには長寿と繁栄を。また明日。


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