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『真・女神転生 デビルチルドレン』~決して子ども向けではない女神転生の世界

デビルチルドレンとの出会い

『真・女神転生』シリーズは、SFC最初の作品である同タイトルからプレイをし続けているのですが、『真・女神転生 デビルチルドレン』に出会ったのはアニメ作品としての『真・女神転生 デビチル』でした。

当時はあまりゲームの情報誌などを買って読んでいたわけではなかったので、ゲームの情報を発売前に手に入れるには、店頭のデモムービーや試遊といったものに頼っていたわけです。

当時土曜朝のアニメ枠を追っていたわたしは、ここでようやく『真・女神転生』シリーズの新作が出ることに気付いたわけですね。

さて、ゲームボーイで発売されたこの作品ですが、ナンバリングタイトルの『真・女神転生』シリーズの濃い世界観とは違い、悪魔のデザインは可愛らしく一新されて世界観も子どもが受け入れられるような雰囲気に仕上がっていました。

今回は、そんな『デビルチルドレン』シリーズ最初期の作品である『黒の書』『赤の書』の紹介と、ちょっとした考察をしてみようかなと思います。

この先、考察する内容の都合上、物語の核心部分のネタバレを含んだものになるので、その点ご容赦くださいませ。

これは子ども向けの女神転生なのか?

子ども向けのゲームデザインと、容量上の制限が強いゲームボーイという媒体で発売された作品ですが、ゲームとしてはやりごたえのあるものでやりこみ要素も十分でした。

ストーリー面は、子ども向けにやわらかい表現を使ってはいるものの、『真・女神転生』シリーズらしい重く濃厚な面も見えるというものに仕上がっています。

当時はまだそういった部分が分からない子どもでして、のちにこのゲームをやり直した頃になってようやくいろいろなことが理解できました。

結論から言えば、確かにゲームデザインは子ども向けに仕上がってはいますが、ストーリーの核心部分は決して子ども向けのものではなく、これまでのナンバリングタイトルや、『ペルソナ』シリーズ、『デビルサマナー』シリーズに引けを取らないエグさだと思っています。

黒の書と赤の書 バージョンの違い

当時は複数バージョンをリリースするゲームであふれていた時代で、『デビルチルドレン』にもセツナという少年が主人公の『黒の書』と、ミライという少女が主人公の『赤の書』の2バージョンが存在しています。

のちにマイナーチェンジ版の『白の書』も発売されましたが、今回はそちらには触れません。

当時のゲームボーイで発売されたソフトは、通信要素を含んだものがとても多く、『デビルチルドレン』においても通信合体などのシステムがありました。

厄介なことに、通信合体やトレードをしなければデビルをコンプリートできない仕様であったため、ぼっちでプレイしていたわたしはとても苦戦したことを覚えています。

さて、この『デビルチルドレン』というタイトルは、実は『黒の書』と『赤の書』とで全然ゲームが違うものに仕上がっています。

魔界へ至るアプローチと魔界での彼らの動き方、集めるキーアイテムの違いといったストーリーの差異があったり、『女神転生』シリーズのキモになる悪魔合体のシステムがバージョンによって大きく違っています。

この悪魔合体の差がクセモノで、入手できるデビルにも幅や難易度の差が生まれているので、選んだバージョンによって苦しんだ人もいるのではないでしょうか。

わたしの選んだ『黒の書』は従来の悪魔合体と似たようなシステムになっていて、合体事故による希少なデビルも作ることができるので、これまでのシリーズと似た感覚で遊ぶことができましたが、パートナーの違いによる難易度の差に苦しめられた覚えがあります。

ストーリーの濃さとエンディング

今度はストーリーについて触れてみましょう。

すでに書いたことと重複してしまいますが、子ども向けの表現を用いつつも、内容は『女神転生』シリーズらしいダークな雰囲気に仕上がっています。

たとえば、主人公のセツナとミライは、小学生という当時シリーズ最年少の主人公となったわけですが、その年齢設定に反してどちらの主人公もとても冷静で大人っぽさを感じます。

従来のシリーズでは主人公が喋ることはありませんが、『デビルチルドレン』では主人公にもしっかりとキャラクター性を持たせています。

これは、人間の主要人物が限りなく少ないことが理由のひとつだと思われますが、子どもがプレイして感情移入しやすいかといわれると、主人公たちの大人っぽい性格もあって難しいのではないでしょうか。

そしてこのゲーム、最終的に行き着くところはひとつなのですが、一応マルチエンディングになっています。

このエンディングの分岐は、片方はクリア後のやりこみにつながり、もう一方は、いわゆる強くてニューゲームとなる選択になっているわけですが、ここの分岐がキャラクターの関係性に踏み込んだものになっていてわたしは大好きです。

しかし、話を理解すればするほど、クリア後へと進む選択肢を選ぶことが何を意味するかが分かってしまい、その選択をすることに躊躇が生まれてしまいます。

このシーンについては、『黒の書』でプレイをしている方がより重い選択になるのでダークで救いのない雰囲気を楽しみたいのであれば『黒の書』でプレイすることをお勧めします。

キャラクターの名前に秘められたもの

『デビルチルドレン』に登場する主要な人間の名前は、すべてストーリーに沿った意味を持っていると考えます。

主人公であるセツナは漢字で「刹那」になり、きわめて短い瞬間を表す言葉、もう一方の主人公ミライ「未来」であり、明日を指す言葉になっていますね。

そして、もう一人キーマンになる人間、セツナの弟として登場するナガヒサは漢字にすると「永久」になります。

「刹那」とは、「今その時」を表しているとも考えられ、今という瞬間は常に動くものであって、「刹那」は「未来」へと向かっていくことになります。

対して「永久」とは、ある意味では「停滞」を表す言葉であると考えられますね。

主人公のセツナとミライ、そしてナガヒサの名前を見るに、主人公ふたりととナガヒサは相容れない関係であることを示唆していたのだなと、今になって思うわけです。

女神転生的な勢力図と主人公たちの対立

『女神転生』シリーズではロウとカオスの勢力が対立している様子が描かれており、選択次第でそのどちらとも相容れない立場を貫くこともできます。

『デビルチルドレン』ではデビルとテンシの勢力の対立が描かれていて、ナンバリングタイトルほど勢力やキャラクターの立場は複雑なものではありませんが、この様式を踏襲しています。

そのどちらとも相容れない「ニュートラル」という立場の選択肢を取ることもできません。

ここで、主人公やナガヒサの設定について触れておきましょう。

「デビルチルドレン」という立場である主人公たちは同じ悪魔の血を引いた異母兄弟であることが作中で語られます。

一方で、序盤に悪魔に攫われてセツナが魔界を旅する原因となったナガヒサは、母親こそセツナと一緒ですが、実はテンシの血を引いた「エンゼルチルドレン」であることが語られます。

デビルとテンシは、世界を新たに作り変えるか再生するかで対立していて、それはそのまま、それぞれの立場に立つセツナたちとナガヒサの対立につながっていくわけです。

そして逃れられない選択の果てに、セツナたちはナガヒサたちテンシの勢力を打ち倒し、未来へと歩みを進めるのです。

世界の未来、新生と再生の物語

その先には、実はもうひとつの選択があります。

それはセツナたちが神となって世界を新生するか、未来へと歩みを進めるかというものです。

彼らが神になることを選んだ場合は世界は新生されますが、その選択をした主人公は神として高次の存在となったために世界から消え去ってしまいます。

「デビルチルドレン」である主人公の片割れは、最後まで隣にいたためか、同じ存在であったためか、神となった主人公のことを覚えています。

しかし、世界が新生したことでデビルやテンシの対立による事件が起こらなくなっているのでナガヒサも事件に巻き込まれることなく平和に暮らしていますが、彼は神になった主人公のことは覚えていません。

『黒の書』においてこの選択を選ぶのはセツナになるわけですが、そうするとナガヒサは兄のことを忘れてしまうのです。

セツナとナガヒサは仲の良い兄弟でしたが、この事件に巻き込まれたことで、どうあっても再びその手を取り合って平和に暮らすことができないのです。

そういった救いのない展開は『女神転生』らしいものだといえますが、子ども向けのものとしてはややディープなものにも思えますね。

ゲーム的な面白さは子どもにも受け入れられるものですが、大人がプレイしても十分楽しめるものに仕上がっていると思います。

最後に

ここまで読んでいただきありがとうございました。

少しでも『真・女神転生 デビルチルドレン』の魅力を語れれば、主人公たちの名前に秘められたものの考察ができればと思って記事にしてみました。

核心部分のネタバレを含んだ内容の記事になりましたが、そこへと至るストーリーにはほぼ触れていません。

もし、これを読んで興味を持っていただけたのであれば、PS3やPSVITAからはゲームアーカイブスでPS版『黒の書・赤の書』を購入することもできるはずなので、ぜひプレイしてみてください。

記事としては、まだまだ稚拙で読みにくいものであるという自覚はありますが、今後もいろんな方の記事を読んで学び、わたしの好きなゲームについて少しでも魅力を伝えられるような記事を書いていきたいと思っています。

次回も読んでいただけると嬉しいです。

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