見出し画像

そっと寄り添う学校司書さんのお話〜相沢沙呼『教室に並んだ背表紙』〜

かおりさんへ

こんにちは。
前回のお手紙のクイズの答えは「君の名は」で合ってるかな。いやあ、本屋さんの仕事っぷりはすごいわね。立ち仕事と体力勝負というところがネックにはなるけど、私もやってみたい!道楽で小さな小さな本屋さんをかおりさんと一緒にできたら楽しそうだねえ。

それはそうと、私も本屋さんのお話について書こうかなと思って、図書館に行って見つけたのがこの本。本のコンシェルジュである学校司書さんのお話、相沢沙呼『教室に並んだ背表紙』です。

中学校にある図書館を舞台にした話なんだけど、この図書館の受付近くにある小さな書架がね、おもしろいんだ。中学生に読んでもらいたい本が作者別でも出版社別でもなくて、タイトルの五十音順に並んだ書架なの。

「本に出逢うのに必要なのは誰が書いたものとか、どこの会社が出しているとか、そういうことじゃないからよ」という学校司書のしおり先生の考え方かららしい。中学生が直感で選べる本棚、いいなあ。

学校生活の中でヒリヒリとした人間関係に悩むさまざまな中学生がしおり先生と関わりながら、小さい一歩を踏み出していく話で、ありきたりといえばありきたりなんだけど…。

でも、中学生に直接働きかけるというよりは、本を介して、教室ではなく図書館を舞台として、先生とは少し違う学校司書という立場だからこそできる寄り添い方がとても優しいんだよね。大人の私でさえ、じわーっと暖かい気持ちになるから、ぜひ、中学生に読んでみてほしいなと思う。

あとね、この本は全体を通して、ちょっとミステリー仕立てになってるの。登場人物はあれ?さっき出てきたあの子か?という感じで少しずつ5話目まで出てきて、エピソードも一見関係なさそうなんだけど、最後の6話目で綺麗に完成していく。

そして、「女の子が主人公で、でも恋愛、部活、友情そういうのは出てこない話」として出てくる本があるんだけど、答えが書いてないんだよね。というか、この本に登場する本はひとつも書名が書かれてないの。どの本なのかを推理しろってことなの〜?とそんなところもミステリー。

最後に、かおりさんに伝えたい!と思ったしおり先生の名言をひとつ

「自分が好きなものをね、誰かに読んでもらうのって、すごく嬉しいから」
(略)
「同じものを好きになって、感想を語り合うときって、本当に幸せな時間なんだよ。この広い世界で、同じ感性が巡り合うの。それも、読書の醍醐味だよね」

単行本P243より

いやあ、ホントにそうだよ。かおりさんに薦められた本のページをめくる時間、読み終わって感想を言い合う時間は「幸せ」そのものだもんね。私たちの「読みたいふたり」も、はや1年。これからもどうぞよろしくね。

2024年8月9日
やすこより





この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?