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全ての最良を祈る



誕生日に全ての最良を祈る
どこかでいつもだれかの誕生日
全ての日に蝋燭が灯る
全ての日に全ての最良が祈られる


全多元宇宙
及びその全ての平行世界
及びその全ての超銀河団
及びその全ての銀河団
及びその全ての銀河
及びその全ての天体
及びその全構成物質
及びその表面上の全生命体の誕生日に
全ての最良が祈られその全てに蝋燭が灯る


あるいは、
ある蝋燭がくしゃみひとつでその灯を消す
風は唾を撒き散らし蝋燭を倒す
ドミノ倒しのように私の誕生日以外の日の蝋燭をなぎ倒していく


消えた蝋燭の日
私の誕生日ではない日
私の誕生日のためではない蝋燭の日
昨日も今日も私の誕生日ではない
全ての最良は有り得ない
全ての最良が祈られ
灯らない全ての蝋燭が折られる


たった一つの灯
たった一つのエゴイズム
たった一つのナルシシズム
たった一つのために
殆どが不可になる
たった一つのパーフェクショニズム




折れた蝋燭の破片を構成するそれぞれの原子の粒の誕生日には全ての最良は祈られていないのか

そもそも蝋燭なんてないのではないか
目の前に見えるのは蝋燭の幻影
蝋燭の形をした粒子の塊に願いを込めている

その粒子の誕生日の灯を見つめると
穏やかな空が見えた

穏やかな空に一つのささやかな祈りを捧げる

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