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小説公募という名の青春、あるいは。1(執筆開始~1年目の途中まで)

初めましての方ははじめまして、よみいです。
始めに書くべきは自己紹介記事な気がしないでもないですが、気が向かないので割愛。
今回書くのは、ずばり、公募レースについて。僕がキャンパスライフという人生最大(と言っても過言ではない)の青春を墓地に送り特殊召喚した、「小説公募」という残酷で薄情で美しい、ひとつの物語についてです。

あまりに長くなるので、当記事はたぶん3~4分割にします。

公募戦績一覧

もったいぶることでもないし、この項目しか興味のない方も沢山いらっしゃるでしょうから、先に僕の公募全成績を載せておきます。

2018年
・第25回電撃小説大賞 四次選考落選
・第6回ネット小説大賞 二次選考落選

2019年
・第26回電撃小説大賞 四次選考落選
・第14回小学館ライトノベル大賞 二次選考落選×2

2020年
・第27回電撃小説大賞 一次選考落選×2

2021年
投稿なし

2022年
・第18回MF文庫Jライトノベル新人賞(二期予備審査) 最終候補
・第29回電撃小説大賞 四次選考落選
・第7回スターツ出版文庫大賞 落選
・第15回GA文庫大賞前期 一次落選

2023年
・第16回講談社ラノベ文庫新人賞 二次落選
・第17回小学館ライトノベル大賞 優秀賞受賞

以上がひとまずの戦績。これをどう思うかはそれこそ人によりけりだと思いますが、結果は結果、落選は落選、受賞は受賞、というドライさは公募界隈にある種通底する考え方ではないでしょうか。

そして、ここからは一年ごとに、主にその年に書いた作品について中心に公募生活を振り返っていこうと思います。興味のある方はもう少しお付き合いいただけると嬉しいです。

一年目

大学一年生の冬、思い描いていたキャンパスライフとはかけ離れた現実を直視できなくなりつつあった冷たい午後、僕はふと思い立ちました。「そうだ、小説書こう」。元々、高校の頃に小説を書いてみたいと思っていたことがあり、それをたまたま思い出したのです。高校の頃の自分はといえば部活に勉強に遊びに恋愛にインターネッツの別界隈の活動に(の部分は恥ずかしいので割愛)、まあとにかく忙しく、結局小説なんて書く時間も気力もありませんでした。ところが、今はどうでしょう? 回りにいるのは友達ふたりと数人のヨッ友だけ、サークルは幽霊部員、長期休みは六十日×2、そしてバイトは社会が怖くてろくにしていない。何が言いたいかって、何か不毛なことをするにはもってこいの時間で溢れていたのです。
それからプロットを作り始めるまでに時間はかかりませんでした。理由はめちゃくちゃシンプル。「今日ちょっと調べ物あってさ」と断って大学の図書館に行き一人でプロット作りすれば、距離感の微妙なヨッ友たちと帰り時間をずらせるから。理由がネガティブすぎるだろ。
まあ、そんなこんなで図書館でプロットを作る日々が始まりました。
今思い出しても、あの頃はなんとも言えぬ不健康な楽しさに満ち満ちていました。例えるなら、爆弾を作っている感覚。この作品で、本気で世界を爆破できると信じていました。そして、プロットを作っていた頃は知りませんでした。

……こんなにも、創作が苦しいものだなんて。

本文に入って30DP(DP=42文字×34行のフォーマットのこと)くらいの地点で、ふと思いました。苦しい。書いても書いても進まない。いや、違うな。(PCの前に)座っても座っても進まない。何日座っても進まない。
考えてみれば当たり前なんですよね。そりゃあ進まないんです。座ってるだけなんだから。
そんなこんなで、僕は大学の冬休み、みんなが男女グループでスキーだのスノボ旅行だのしている中、一人誰とも連絡をとらずに(ラインを平気で10日くらい見ないこともザラだった)、ただPCの前に居座り、ふと思いついて五行書いては四行消し、みたいなことを繰り返していました。
この頃の冬アニメでは『宇宙よりも遠い場所』というアニメがやっていまして、まあ端的に言えば女の子たちが頑張って南極に行く話なんですが、僕は暗い部屋で録画した『よりもい』を見ながら、「アニメの中の女の子たちは新たな世界へ踏み出しているのに、俺はどこにも行けない」と一人で声をあげて泣いていたのを強く覚えています。

淀んだ水が溜まっている。それが一気に流れていくのが好きだった。決壊し、解放され、走り出す。淀みの中で蓄えた力が爆発して、全てが動き出す……!

宇宙よりも遠い場所 第一話

そんな、流れ出さないただの淀んだ水だった僕にも、ついにその時が訪れます。それは忘れもしない四月一日の午後。そう、処女作の初稿完成です。
エンドマークを打つのって、なんであんなに気持ちいいんでしょうね?
嬉しすぎて、家飛び出して、近所を走り抜けたのを覚えています。この時すでに十九歳。行動としては幼すぎるけれど、一作でも書き上げたことのある人なら、気持ちくらいは分かってくれるんじゃないでしょうか。

そんなこんなで、僕は無事、処女作『音楽ミイラに花束を』を電撃大賞に応募することができました。
内容としては、「音が聞こえない前提の世界で、音の聴こえてしまう障害を持つ少女と、失われた音の世界に憧れを持つ少年とのボーイミーツガール」でした。今でも設定だけはいいと思うんだよな。まあ大分センシティブな部分まで必然的に扱うことになるから、今の僕はおろかあの頃の僕に扱える力量なんて到底なかったんですけどね。

そして、時は流れて電撃一次の発表がある七月十日。
相変わらず、僕は孤独でした。灰色の大学生活の中で、社会におびえながらバイトもできず、電撃の発表を待つことだけが生きがいでした。
発表は、自宅トイレで、スマホでスクロールしながら見ました。人生で緊張で吐きそうになったのはこの時が生まれて初めてでした。六年間続けた陸上競技でも一度たりともなかった過緊張が小説公募の一次選考で起こったことを客観的に見ていた僕は、自分が思ったよりも本気で執筆に打ち込んだ、ということに気付きました。

気付いたのと、
自分の名前を一次通過リストの中に見つけたのと、
涙が溢れたのは、奇しくも全く同時のことでした。

……は? 本当に、認められたのか? 俺の小説が?

今日死んでもいい。冗談じゃなく、そう思いました。
頭が騒がしくて、その日は結局一睡もできませんでした。

やがて五日が経って、十日が経って、ようやく一次通過を理解し始めた頃。
僕は、とある公募勢の方のブログで、創作界隈というものの存在を知ります。


次回、孤独な大学生活を大学でエンジョイする以外の方法で脱しようと企む非リア編に続く


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