見出し画像

「親子で読む」から始めよう!“中学受験のプロ”が一人読みデビューにおすすめする「幼年童話」

「本が好きになってほしい」と願う親は多いもの。文字が読めるようになった子どもが、一人で本を楽しめるようになるには、どうしたらいいのでしょうか。SAPIXなどで講師をつとめ、現在は独自の読解メソッドで中学受験のコーチングを行っている齊藤美琴さんに、おすすめの「幼年童話」と、一人読みのサポート方法についてお話を聞きました。


読み聞かせから一人読みへの橋渡し

 絵本の読み聞かせから、一人読みへのつなぎ役となるのが、「幼年童話」です。小学校に入学したら、本は子どもが一人で読むものというイメージがあるかもしれませんが、「文字が読めること」と「本が読めること」は、同じではありません

 多くの子どもは、文字を読む速さよりも、心が先に成長します。お友だちとの関わりが増える小学校入学前後は、心の成長がいちじるしいとき。おもしろいと感じる本も変化します。自分で読める本と、おもしろいと感じる本のあいだギャップができて、その結果、自分で読める本は物足りないと感じたり、おもしろいと感じる本はワクワクする展開まで一人で読み進められなかったりすることがあります。そうして、「この本はつまらない」「おもしろくない」となり、子どもの本離れや本嫌いが始まるのです。

幼年童話も「親子で読む」から始めよう

 読み聞かせから一人読みへスムーズに移行するには、幼年童話の「あたえ方」が重要になります。乳児期にたっぷり読み聞かせをしていても、子どもが文字を読めるようになると、本選びは手伝って、それ以外のサポートはついつい手放しがちです。しかし、ここでしっかり伴走することが、その後の子どもの本との付き合い方に大きく影響します。

 まずは「親子で読む」という姿勢で幼年童話にふれてみましょう。たとえ親の手助けがあったとしても、「こんな本が読めた!」という経験をすることが、子どもの自信になります。次のポイントも参考にしてみてください。

「一人読み」のサポート方法は?

  • 序盤は「読み聞かせ」から始める
    幼年童話も絵本と同じように、はじめは「読み聞かせ」から始めましょう。もちろん、すべて親が読まなくてOK。子どもがおもしろいと感じる場面まで読み聞かせたり、一緒に読んだりして、“助走”をサポートしていきましょう。一緒に本をパラパラとめくって「この先どうなるのかな?」と声をかけたり、「そういえば、あの本の続きってどうなったの?」と聞いたりすることで、読み聞かせから一人読みへの階段がスムーズにのぼれます。

  • 「しおり」の使い方を教える
    幼年童話は、絵本に比べて文字の量がぐっと増えます。絵本は一度に何冊も読んでいたとしても、幼年童話は、最後まで一気に読み切るのが難しい本もあるでしょう。そんなときは、「しおり」の使い方を子どもにレクチャーするチャンスです。少しずつ読み進めるのも、本との向き合い方のひとつです。「一度お休みして、また読みたくなったときに続きを読もう」と話してみましょう。

  • 「飛ばし読み」もOK!
    子どもがどんどんページをめくっていると、「本当に読んでいるのかな?」と不安になるかもしれませんが、そのまま見守っていてOK! 「飛ばし読み」も、本の読み方のひとつです。娯楽としての読書なら、たとえ一部を読み飛ばしをしても、誰も困りません。絵に助けられながらページをめくって、「読めた!」という達成感が得られたことが大事です。お気に入りのページだけをくり返し読みたがるときも、「またそこ読んでるの?」と言わず、その子の本の楽しみ方として受けとめましょう。もちろん、あまりにもストーリーがつかめていないようなら、物語のおもしろさを伝える感覚で親がサポートしてもOK。「この本は子どもが自由に読むもの。こっちの本は一緒に読んで楽しむもの」と、本によってメリハリをつけるのもいいですね。

子どもに合う本はどう選ぶ?

 表紙をみて、実際に本を開いて、文字の大きさや字組み、絵と文字の割合をまず確認しましょう。絵本や幼年童話では、「○歳からおすすめ」「◯年生におすすめ」という表現がよく使われますが、あまり気にしなくて大丈夫。子どもが一人で読める本ではなく、「サポートすれば読める本」という観点で選んでみましょう

 動物が主人公のお話を好む子もいれば、自分と同年齢の子どもが主人公のお話に興味を持つ子もいます。絵の雰囲気も参考にして、わが子が喜ぶ一冊を探してみてください。子どもに勧める本は、なるべく親も事前に内容を知っておくといいですね。子どもが好む内容だけれども、文章量が多い、言葉が少し難しいなどと感じたときは、そのぶんサポートをふやすこともできます。

 子どもの読むスピードを確かめるために、読んでいるところを指でたどりながら読むように、促してみましょう。文字をどれくらいの速さで追っているのか確認でき、本選びにも役立ちます。

齊藤さんおすすめの「幼年童話」

  • 『あらいぐまのせんたくもの』(大久保雨咲 作/相野谷由起 絵) 童心社

コインランドリーにやってきたおばあさんと、「かなシミ」というシミがついたハンカチをもつあらいぐまのお話です。相手はどう思うのかな、どうしたら喜ぶかな。そんな他者との関わりと、心の動きをていねいに描いています。「友だち」という存在について考えられるやさしいストーリーで、小学校に入学してたくさんのお友だちと出会う時期にぜひ読んでほしい作品です。絵がたっぷり入っていて読みやすく、ページをめくることで盛り上がるタイプのこどもにはとくにおすすめです。

  • 『ふたりはとっても本がすき!』(如月かずさ 作/いちかわなつこ 絵) 小峰書店

本を読む楽しさが存分に味わえる作品です。早く何冊も読むのがいいのか、一冊をじっくり読むのがいいのか。そんな本との向き合い方がテーマになっています。「本が好きな気持ちを大切に」というストーリー展開に、多読重視の大人もハッとさせられるのでは? 本を読み始めた小学校低学年の子どもに、ぜひ読んでほしい一冊です。

  • 『なぞなぞライオン』(作・絵 佐々木マキ) 理論社

親子で楽しく読める一冊です。なぞなぞ、早口言葉、しりとりをテーマにした3つのお話が収録されています。毎日一編ずつ読んで、親子で言葉遊びに挑戦するのも楽しいですよ。

  • 『番ねずみのヤカちゃん』(リチャード・ウィルバー 作/松岡 享子 訳/大社 玲子 絵)福音館書店

「どうなるのかな?」とワクワクして読み進めたくなるお話です。ユーモアたっぷりの展開に、どんどんひきこまれていきます。声の大きさを文字の大きさであらわしている場面があるので、読み聞かせたり、音読したりして楽しむのもいいですね。子どもにおすすめすると、必ずといっていいほどお気に入りになる人気の一冊です。

  • 『はじめてのキャンプ』(林 明子 作・絵)福音館書店

5歳のなほちゃんが初めてのキャンプに向かうドキドキ、非日常の中での背伸びと成長を描いた作品です。「私だったらできるかな?」と、主人公に自分を重ねながら読むことができます。なほちゃんと一緒にキャンプにいくお兄さんお姉さんの姿に憧れて、5歳以上の子どもも楽しめるのではないでしょうか。この夏キャンプに行く子どもにもおすすめしたい一冊です。

  • 『しんぱいなことがありすぎます!』工藤純子 作/吉田尚令 絵/金の星社 刊

いろいろなことが不安な1年生のももちゃんと、おおらかな同級生・かずまくんの小学校生活が描かれています。入学を控えた年長の子どもや1年生は、きっとリアルに共感できるはず。2年生以降の子どもも、入学時を振り返って懐かしむことができますね。主人公たちに気持ちを重ねて、元気がもらえる一冊です。

図書館で子どものお気に入りの一冊を探してみよう!

「本を選ぶときは、図書館も活用するのがおすすめ」と齊藤さん。図書館で一冊ずつ本を開いて、文字の大きさや雰囲気を確認するということが、親子にとっていい経験になると話します。

「図書館で本を開いてみて、これ!という本が見つかったら、購入して“その子の本”にしてあげるのもいいですね。くり返し読みたいと思える本は、成長していく中で、その子の心のよりどころの一冊になるはずです」

齊藤さんが教えてくれた一人読みのサポート方法を参考に、親子にとってよりよい読書の時間が過ごせるといいですね!

取材・文 三東社

【プロフィール】
齊藤美琴

中学受験のコーチングをメインに、教科指導、幼稚園・小学校受験の相談など、家庭の力を引き出すレッスンを行う。SAPIXの個別指導部門・プリバート東京教室での国語科専任講師、ジャック幼児教育研究所(四谷教室)での講師を経てフリーランスとして独立。読解トレーニングときめ細かい学習コーチングに定評がある。2022年に渋谷ヒカリエ8階のシェア型書店に『みこと書店』をオープン。PICCOLITA(ピッコリータ)代表。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?