【“中学受験のプロ”が教える】子どもの「読解力」は家庭のチカラで育もう!
「読解力」は、テストで文章問題を読み解くために必要な能力だと思っていませんか? 「将来どんな仕事をするとしても、読解力は必要」と話すのは、SAPIXなどで講師をつとめ、現在は独自の読解メソッドで中学受験のコーチングを行っている齊藤美琴さん。読解力が役立つ場面や、子どもの読解力を育むために家庭でできることについて、お話を聞きました。
ものごとを受け止める力が「読解力」
「読解力」とは、ものごとの背景を読み取り、「受け止める力」です。読解力というと、難しい本を読むため、テストでいい点をとるために必要な力だととらえられがちですが、それだけではありません。絵や写真、会話をどう受け止めるかにも「読解力」が求められます。
読解力は、大人になってからも役立つ力です。たとえば、話を聞いてメモをとるには、相手の話を正しく受け取り、取捨選択して重要な部分を抜き出す力が必要です。これもいわば、「読解力」だといえます。
子どもがゆくゆく理系に進んだとしても、専門性を深めて論文を書くには、さまざまな文献を読むことになります。最近はSNSで言葉尻をとらえた論争がよく起きていますが、読解力が豊かになれば、こうした争いを避けることもできるかもしれません。さまざまな場面で、「読解力」は必要になるのです。
読解力は読書を通じて育むこともできますが、方法はひとつではありません。それまでの経験、感受性、想像力など、その子がどんな道を歩いてきたかが「読解力」としてあらわれます。こうした総合力を伸ばすことが、「読解力」アップにつながります。
読解力アップのために家庭でできる3つのこと
「読解力は、経験値も感受性も想像力も、すべてまとめた“総合力”」と齊藤さん。では、子どもの読解力を育むために、家庭でどんなことができるのでしょうか。齊藤さんに教えていただいた3つのポイントを紹介します。
◆【POINT.1】子どもと同じ本を読んで、解釈のズレに気づく
文章には書いてあるのに、まったく書いていないかのように子どもが読み飛ばしている。そんな場面に出会ったことはありませんか? 子どもは、大人が思っているように文章を読んでいるわけではありません。大人が気づくような作中の場面転換、季節の移り変わり、感情の動きなどに気づかないまま、読み進めることもよくあります。
こうした読み飛ばし、読み違いに気づくには、子どもと同じ本を読むのがおすすめです。同じ本を読んだあと、「あの場面、どう思った?」「ラストにつながるあの伏線に気づいた?」と、ピンポイントで質問してみましょう。
解釈のズレに気づいたら、読み方のポイントを子どもに伝えます。「この一文が、この先の展開につながる予兆なんだよ」「主人公の気持ちはここには書かれていないけど、この行動がうれしい気持ちをあらわしているよね」など、具体的に本の場面を示しながら、親が読み方をレクチャーします。
親子で作品の感想を伝え合うのもおすすめです。「あのキャラクター、いい味、出してるよね」「情景の描写が細かくて、その場にいるような気持ちになるね」など、それぞれの感じ方を言葉にして話してみましょう。子どもがどんなことに心を動かすのかを知ることができます。
◆【POINT.2】子どもの話を聞いて、「伝えたい」気持ちを育む
ものごとを受け止める「読解力」と、感じたことを言葉にして「伝える力」は、表裏一体です。子どもの伝える力を育むには、親が子どもの話を聞くことが近道です。「ねえねえ」と子どもが話し始めたときは、「それでそれで?」と合いの手を入れたり、「もしかして〇〇なの?」と水を向けたりして、子どもに気持ちよく話してもらうようにしましょう。
子どもの伝えたい気持ちを育てていくには、呼び止められたときすぐ応じるのが理想ですが、親にもタイミングが合わないときはあるものです。そんなときは、「今は〇〇していて忙しいけど、話をしっかり聞きたいから、〇時になったら話そう」と伝えましょう。親の都合を伝えつつ、「あなたの話に興味があるよ」という気持ちをあらわすことがポイントです。
定期的に家族で話す時間をつくるのもいいですね。企業では朝礼などの場で、参加者がよかったことと新しいことを話す取り組みをしていることがあるそうですが、こうした「Good & New」を親子でするのも一案です。お気に入りのお菓子とお茶を用意して、高学年の子どもであれば親の仕事のことなども話してみてください。親が心を開くことで、子どもが語ってくれるようになることもあります。また、最近の流行りの言葉を子どもに教えてもらうのもいいですね。親子の会話の量を増やすことで、自分のことを伝えたい、相手のことをもっと知りたいという気持ちが育まれます。
◆【POINT.3】好きなことはとことんやって、「知りたい」気持ちを育てる
読解力には、子どもの感受性も影響します。感受性を高めるには、さまざまな体験をして経験を積み重ねることが大切です。ピアノでも、お絵かきでも、昆虫採集でも、子どもが好きなことならなんでもOK! 深く没頭しそうなものが見つかったら、そこに時間とお金をかけてみるのもひとつの方法です。
子どもの「好き」を大きく育むには、親の誉めが欠かせません。誉める声かけ、認める声かけをどんどんしていきましょう。「こんな難しいこと知ってるの?」と能力を評価するより、「その情熱はすごい!」「さすが、博士だね!」と、熱中していること自体を認める声かけをしていけるといいですね。
もう一歩踏み込むなら、熱中している分野でまだ子どもが見たことがないことを、親が見せてあげられるといいですね。たとえば、その分野の第一人者についてのドキュメンタリーを見せたり、めずらしい展示をしている博物館に行ったり。子どもの「好き」に親も向き合うことで、子どもの好奇心や探究心がより豊かに育まれます。
そして、好きなものに向かう気持ちを「もっと知りたい!」という好奇心につなげて、本や図鑑を一緒に読んでみてください。好きな分野だったらいつもよりも読み応えがあるものでもいいかもしれません。好奇心が原動力になって、難しい文章にもアタックする意欲と力が湧いてきます。
読解力は、生きるために欠かせない力
「読解力は、コミュニケーションを育む土台にもなる」と齊藤さん。今回紹介したアイデアのなかから、「1つでもマッチすることを試してほしい」と話します。子どもがより楽しく、より豊かな道を歩んでいくためにも、今回紹介したことをぜひ参考にしてみてください。
取材・文:三東社
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