展覧会みにいったよ記録:Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.
私は自分で建てた、自分の墓の中にいた。
静かに静かに、他人が自分の墓を作り、誰かの作った墓を片付けるスタッフの様子を、自分の墓から見守っていた。
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この墓は、壁と同化するために着ていた布を裏返してつくった。
「あなたはリバーシブルの中にいる」
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VRの待ち時間が100分だった。
アートギャラリー4Fの別の展覧会を眺めてこの文章を書き始めたが、墓の中で書きたいので戻ってきた。
この墓は薄暗いけど、人工の木漏れ日が射し込んで、他の人が墓を建てたり片付けたりする音が響く。
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最初の部屋で電話がかかってきた。
野生の私ってなんだろう。私は野生に戻ろうとはしていないけれど、違う私にはなりたいと潜在的に思っているのかもしれない。
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人には人のお墓がある。
確かにお墓というものはわりと形式的だなと思う。
その中でもちょっとした形とか、埋葬の仕方とか、彫ってある文字でなんとか個性を出そうとしている。
今日はテントでお墓をつくった。意外とみんな違う形になるものだ。ペットボトルの重しの置き方で全く変わる。
私は墓の中に入ったら支柱がめちゃくちゃ斜めで笑ってしまった。ちゃんとまっすぐにして、私は私の墓に入った。
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なんか!墓の中に入ってぼーっとしてたら周りの墓めっちゃない!!!!!えええ
焦ってとりあえずVRの順番待ちの人に戻ってきたことを伝えるの忘れてた〜と思い、伝えてきた。びっくりした〜
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VRが終わった。明確にわかった。
墓に入るために、私は今日一度死んだ。
いろんな仮面が私の顔を覗いては違うと逃げていき、目の周りの形をした仮面が「私だ」と云わんばかりに顔に装着されると、他の仮面たちが振り向くことはなかった。
最初の部屋でみた、結界が張られた場所が、私の終の住処だった。
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展覧会タイトルは、墓の守り神であるスフィンクスに「たのむ!私が悪かったから!落ち着いて〜!」と懇願しているように感じる。冒頭で電話をかけてきたアイツと一緒に墓地を荒らしてしまったんじゃないか?
だから「それはできない」「いやだなあ」とネガティブな声が囁いていたのではないか。そういう悪行に加担することがわかっていたから。
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広告には「わかりにくいことに向き合う展覧会」というキャプションがあったが、だとしたらこれは大変なミスリードではないか?人によって感じ方は違うし、大多数に向けた広告でこの展覧会を説明するのは確かに難しいのもわかる。しかたないかも。
しかしながら、個人が感じる範囲ではあるが、これはれっきとした「自分の死後と向き合う展覧会」のように思えた。まあでも、そんなこと書いたら誰も来ないか…
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自分が建てた自分の墓でしばらく過ごしてみて、自分で建てたお墓ならこんなにも安心する。日本式の家族で同じ墓に入るならば、死後だとしてもどれだけ安心するのだろうか。
その同じ墓に入る相手は誰なんだ?そもそもこぢんまりとした一箇所にめちゃくちゃ詰まっている場所でもいいなと思っていたぞ?海に散骨もロマンでいいなと思っていたけど?
冒頭のアイツが言っていた「野生に帰る」というのはどういうことか?スタッフのことを「再野生化された」と言っているのはどっちだ?
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VRを待たずに見たい人は朝一に行ってください。朝一じゃない場合はテントを建てる前に番号札と受付を必ず!頼む〜!
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