過去作投稿 140字小説10篇

noteに集約するため、昨年応募した140字小説をまとめます。

「結」を含む140字小説5つ

遥か昔、星と星を結んで話を紡いだ先人がいた。
「さっきのプラネタリウムの話、切なかったね」
「うん。でも、今ふたりは星になってずっと一緒。もう寂しくないんじゃないかな」
「そうだといいな。私もあなたと一緒になりたいな」
「ぜひ」
数千年の時を越え、今もなお語り継がれる話が、人と人を結んだ。

「今日は新月だね。冬の大三角がよく見えるよ。そっちはどう?」
スマホを傍らに置き、再び空を見上げる。しばらくして、バイブが返信を告げる。
「シリウスが今日も青く輝いているね」
私が好きだと言った星。今は単身赴任の彼との初めてのデートのときのこと。空は今も、私と彼を結びつけてくれている。

高校二年の冬、青井大河、小白千尋、俺平山賢治の三人でふたご座流星群を見た。一等星になりたいと願った千尋は、空へと旅立った。四年後、大河と再会し、思い出と夢を語らった。互いの努力が実を結ぶことを願い、二人で空を見上げると、一際明るい星が輝いている。千尋が背中を押してくれた気がした。

星空の下、契りを結んだ。
「一人前になって、貴方を迎えに来ます」
貴方の言葉を信じ、今日も窓辺で星空を見上げて待つ。都会色に染まって変わってしまったのかも。そんな不安が頭をもたげる。
コンコンコン。
「約束を果たしに来ました」
逸る気持ちを抑え、扉を開ける。変わらない笑顔の彼を抱き締めた。

残業を終えて外へ出ると、リボンのように冬銀河が空を結んでいた。ご褒美の贈り物のようだ。帰り道を歩いていると、内耳の奥であの旋律が響き始める。ピアノの音が鳴り響く。オルゴールのときもある。作曲した数々の音楽家も、こんな夜空を見上げたのだろうか。ノクターンが、今日も私の夜を支配する。

 「並」を含む140字小説5つ

凍てつく空気が肌を刺す。悴んだ指先に白い息を吹き吹き駅へと急ぐ。
「ひゃっ」
頬に温かい何かが突然触れ、仰け反る。
「おつかれ」
鼻を赤くした先輩が缶ココアを当てていた。楽しげに喋る先輩につられ、会話が弾みだす。今日に限って信号は軒並み青。別れた後も、缶の温もりが心身を暖める。

「雛人形だ。毎年お雛様とお内裏様みたいに並んで写真を撮ってもらったよね。たっくんが恥ずかしいからって撮らなくなったんだよね」「昔の話はいいよ」
頬を染めたたっくんがそっぽを向く。
「あれ、買うか」
「気が早いよ」
お腹の子が女の子だとわかって喜んでいたのは、私だけじゃなかった。

この景色は、俺だけの宝物だった。真夜中の山から見る地元の街並みは、昔見ていた頃から少しずつ変わっていて、変わらない灯りもある。
ーーなあ、勇気をくれないか。今日、初めてこの景色を見せたいと思った相手を連れてきているんだ……
手の震えを抑え、助手席の扉を開ける。
「さあ、行こうか」

明日は午後から三度目のデート。明日僕は、告白する。星空の綺麗な所で告げるべく車のガソリンを満タンにした。彼女の防寒グッズの準備も万端だ。でも肝心の言葉が浮かばない。月並みな表現ばかりが頭を巡る……目覚めると太陽が高く上っていた。車を飛ばしながら、僕はなおもメロウな台詞を考える。

白梅が咲き乱れる並木道を歩く。花弁がはらはらと舞う様子が、あの雪の夜と重なる。ーーやけに冷えると思っていたら雪が降りだした。財布を忘れたからバスには乗れない。
「これどうぞ」
「え?」
「寒そうだから」
そう言って手袋を押しつけた君が、こうして隣に並んでいるなんて、夢みたいだ。

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