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夢路

 夢を見た。地元の鉄道会社の話だ。

キャッシュレス化が進み、駅の改札をICカードで通る人が多くなったこのご時世、ICカードで一本化するように国から指示が出た。

しかし、資金面でどうしてもICカードを処理する機械が導入できず、未だに切符を発券している鉄道会社がある。

海沿いを走る始点から終点までの距離が6.4キロメートルの、とても短くて、小さな鉄道会社だ。

 とりあえずホームに停車している列車に乗り込む。車掌から切符を買い、2両編成の列車は、20人ほどの人を乗せて動き出した。茂みの中の狭い道を、ゆっくり走っている。

車窓から灯台が見えてきた。列車が駅に入り、運転士の「終点ですよ」という声が聞こえたため、列車を降りた。

 駅構内は土産屋になっていた。地元で採れた食材を使った菓子などが売っている。

中でも気になったのは記念切符のセットだ。鉄道路線全駅の駅名を1枚ずつ印刷した入場券が入っている。

「それ気になる?」と店員に声をかけられた。

「未だに切符使ってるのってここだけだもんね。記念切符の売り上げが会社の主収入らしいよ」

それは知っている。お菓子の売り上げが鉄道事業より儲かっていることも。鉄道会社の主収入が物販でいいのだろうか。

 駅を出て歩くと踏切があった。学校の通学路になっているため、毎日通る踏切だ。踏切警標の下に「とまれ見よ」と書いてある、遮断機も警報器もない踏切だ。

立ち止まって左右を確認し、歩き出した瞬間「プーーーーン!!」と右から警笛が聞こえてきた。いつの間に来たのだろう。

 列車はゆっくり自分の前を通る。何となく列車の窓を見ると、見覚えのある人と目が合った。

学校で仲の良い女の子だった。帰り道が途中まで同じなのでいつも一緒に帰っている子だ。他の乗客はいなかった。

その列車を見て、何故か幼い頃に聞いた幽霊電車の話を思い出した。この列車と女の子は消えてしまうのだろうか。

そう思った瞬間「ちょっと待って!!」と声にならない声を出して列車を走って追っていた。

女の子は列車の後ろの窓で、首を傾げて微笑んでいた。

 口を「ま」の形で大きくあけて目を覚ました。

翌日、いつも通り学校に行き、授業が終わって女の子といつも通り帰路につく。

夢で見た踏切に差し掛かる。この時間、この踏切を通過する列車がないことを知っているため、しっかり確認もせずに渡ろうとした女の子を「ちょっと待って!!」と止めた。

驚いた様子で「どうしたの?」と聞いてきた女の子に

「君が幽霊列車に乗ってくるかもしれない」と言った。

女の子は僕の前で、首を傾げて微笑んでいた。

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某鉄道会社を舞台にしたお話が書きたかっただけです。

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