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結末

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結末 1「犯人」

結末 1「犯人」

 私は時速80キロで夜中の臨海地区の広い道路を車で走っている。昼間はコンテナを積んだトレーラーや大型トラックなどが道路いっぱいに列をなしているが、夜中になるとすっかり活気がなくなる。

案内標識と駐停車禁止標識が上向きのヘッドライトに照らされ、反射している。路傍には野良猫の礫死体が横たわっているが、朝になれば見つけてもらえるのだろうか。

 車を走らせていると、横断歩道を歩いている人が前方に見えた

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結末 2「探偵」

結末 2「探偵」

 船の停泊場に置かれているコンテナの中から身元不明の遺体が見つかった。片足のない遺体で、20代後半の男だと思われる。

停泊場の近くの道路に血の跡があり、誤って轢き殺した人間をコンテナ内に遺棄したようだ。

しかし、遺体を隠したいだけであれば停泊場の入り口から一番近いコンテナに隠せばいいのに、わざわざ入り口からそれなりに離れている海沿いのコンテナの中に遺棄しているのは、わたしには理解できない行動だ

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結末 3「本人」

結末 3「本人」

 私は、人を殺した犯人であり、殺された本人でもある。

 数ヶ月前に人を殺した。前に務めていた職場の近くで、故意的に人を撥ねた。

撥ねたのは7年後の私だった。

誰も存在を知らない、または誰も覚えていない私自身だ。

私が、私を殺した。

自殺ということになるから、刑事事件にはならない。

 だというのに私は、わざわざ一人称を「わたし」にして他人になりすまし、犯人である私の行動に対して「理解でき

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