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しろいろの街の、その骨の体温の

「しろいろの街の、その骨の体温の」村田沙耶香

無償に泣きたくなった。

覚えてもないような思い出が

走馬灯のように身体を掻き毟る

痒い 怖い 寂しい

あの頃は全然楽しくなかった

すごく美しい恋愛映画を観て泣いた

魔法使いになるための努力だってした

本と映画とカラフルな絵に救われてた

本を抱えて帰ることが誇りで、

大人に褒められることで頭の悪い子たちを蔑んでいた

小さな三角形の中で戦うクラスメイトたちを

とても遠くから見てる、ふりしてた

そうでしか、自分に希望とか持てなかった

思い出したくない、と思ってしまった

思い出せるものなんて何もないのに

なんにもないのに。

一度自分が死んだのか

温度のない白い骨が

いつから熱を帯びるようになったのか

小説を書いていた。

きっと、クラスのヒエラルキーで云うならば一番下のグループ

小説を読んでもらってた。

素敵な感想をいくつもくれた。

武者小路実篤に興奮していたあの子は、

今、誰に興奮するんだろう

私は今もオードリーヘップバーンが好きだよ

赤とか黄色とか緑とか、カラフルなものが好きだよ

混沌やカオスの中に、答えがあるって思っているよ

日常はいつもファンタジーと隣同士でいてほしいって思っているよ。

ナラタージュ以来の感動だった。

素敵な作品に出合えた喜びを抱えて今日も眠ろう

http://yokohasada.com/

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