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蘇軾 「水龍吟・次韻章質夫楊花詞」

[章質夫の「楊花(=柳絮、柳の綿わた)」の詞に次韻する]

君は花のようで また花ではないようで

人知れず 衰えて地に落ちます

家を離れ 道ばたに打ち捨てられ

それでも君には 無情なくせに

どこか情け深いところもあります

腸のような枝はねじれ傷つき

つややかな眼のような葉は気だるげに

それを開こうとしながらも じっとつむっています

風のまにまに万里の彼方かなた

夢のなか 想うひとの居所を尋ねてみるのですが

またいつものように うぐいすの声に呼び起こされるのでした


この花の散り尽くすのが辛いのではありません

西の庭に落ちたくれないの花びらを

もとの枝につなぎ止められないのが恨めしいのです

明け方の雨が通り過ぎたあと

散り落ちた柳の綿はどこにあるのでしょう

それは池一面に散らばった浮草となるのです

春の景色をさんすれば

二分は土くれとなり果てしもの

一分は川の流れに消えゆくもの

よくよく見てみれば

それは柳の綿などではなく

別れを悲しむ人の 一粒一粒の涙なのでした


 次韻章質
 夫楊花詞

似花還似非花

也無人惜從教墜

拋家傍路

思量卻是

無情有思

縈損柔腸

困酣嬌眼

欲開還閉

夢隨風萬里

尋郎去處

又還被 鶯呼起


不恨此花飛盡

恨西園 落紅難綴

曉來雨過

遺蹤何在

一池萍碎

春色三分

二分塵土

一分流水

細看來 不是楊花

點點是 離人淚

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