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『あしたの孵化』 辻聡之

留学生にすすめたい短歌シリーズ

11冊目は、辻聡之『あしたの孵化』(短歌研究社)

わたくしも誰かのカラーバリエーションかもしれなくてユニクロを出る

辻聡之『あしたの孵化』

神様を信じなくてもかまわない暮らしのなかで大吉を引く

夜明けまで雨の予感の立ちこめてわたしはださいTシャツで寝る

借りてきた言葉で報告する会議ふいにだれかが冷房を切る


いいなと思った歌を並べてみたら、最後が終止形(日本語教育では辞書形)の動詞で終わるものが多かった。
終止形はもっともプレーンの状態に近く、情感が薄いのがいいのかもしれない。
淡々としていて、そこに意志があるのかないのか、はっきりしないのもいい。



青から黄、赤へとうつる信号機おまえはわかりやすくていいね

妙な語呂合わせのせいで弟の結婚記念日忘れられない

この辺は読みやすくていいです。



写真展に老夫婦ありて沈黙を長く一枚の前に添えたり

まさに「いい絵」です。

今とてもサラリーマンに見ゆる貌い・ろ・は・すの柔さ持てあましつつ

い・ろ・は・すの柔さっていうのが絶妙です。


次の2つはよくわからないんだけども、なんかいいです。

あれは滝を見にゆく人の列そしてこれは遠くから見るぼくの夢

扇風機〈弱〉の日本に寝返りのひとのかたちの夜はこぼれて



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