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周邦彦 「蘭陵王・柳」

[柳のうた]

まっすぐな柳の蔭

薄もやのなか みどりの細い枝がゆらゆらと

隋堤つつみのほとりで いくたび見たことか

水面みなもを払い 柳絮わたを飛ばし 人を見送る柳の姿を

高台から故郷くにのほうを眺めてばかりいる

誰も知る者はいまい

都住まいにみ疲れた この旅人のことなど

宿しゅく通りで 来る年も来る年も

柳の枝を手折たおっては人を送り

その長さはもう 千尺を越してしまった


足にまかせて

昔遊んだところを訪ね歩いた

またしても 送別の宴席に出くわす

哀しい弦の調べ 街のともしびのなか

わたしは酒を呑む 

梨の花が咲き にれの枝が火にくべられる

寒食かんしょくはもうすぐそこ

舟は矢のごとき疾風はやてにのって

憂いのなか 去りゆく

さおは暖かな波に なかばまで差し込まれ 

振り返れば 宿場は遥か遠く

北のほうを眺めても その人影はもう

すっかり霞んでしまった


心はうず

痛みは積もる

いつしか別れの入江に水は流れこみ

渡し場はなお寂しい

ゆっくりと傾く夕日に 春はいよいよ濃くなってゆく

思い出すのは あのひとの手をひいて

月影つきかげうてなにのぼったときのこと

露に濡れた橋の上で ふたりして笛の音に聴き入ったときのこと

じっと思いをらせば

夢のような心地がして

人知れず 涙がこぼれた


柳陰直
煙里絲絲弄碧
隋堤上 曾見幾番
拂水漂綿送行色
登臨望故國
誰識
京華倦客
長亭路 年去歲來
應折柔條過千尺
 
閑尋舊蹤跡
又酒趁哀弦
燈照離席
梨花榆火催寒食
愁一箭風快
半篙波暖
回頭迢遞便數驛
望人在天北
 
淒惘
恨堆積
漸別浦縈回
津堠岑寂
斜陽冉冉春無極
念月榭攜手
露橋聞笛
沉思前事
似夢裡
淚暗滴


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