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郁達夫 『楊梅酒』 (5)

 ここまで話したところで、彼は顔の向きを変え、私のほうには目もくれず、外の日の当たるほうへ視線を移した。

「うん、今回はきっとうまくいく」

 彼はまるで私のことなど忘れ、独りごとを言っているようだった。

「まず、機械に二千元、工場の建築に千五百元、それから千元で石英などの材料と石炭を買って、あとの千元は広告にまわす。そうだな、広告は欠かせないからな、これでしめて五千五百元。五千五百元の元手。これで製品を焼成できるようになって、一日に百元分の製品ができるとすると、×かけ三十で、一月ひとつき三千元。一年で三万六千元、八掛けすると、三八さんぱの二万四千、三六さぶろくの千八百で、それでもまだ二万五千八百元はある。六千元を元手にして、六千元を拡張するには、一万元で住居をかまえて、ああ、住居はもちろん社員もみんな住めるようにしてだな。えっと、そういうわけで、あと一年教えるだけで、一年後には、もう……」

 私はただ彼の熱心に計算するのを横で聞いていたわけだが、いったいぜんたい何を計算しているのか理解できなかったので、彼に聞いてみた。

「なにを計算していたんだい? あしたの朝の演習問題?」

「いやいや、ガラス工場のことさ。一年後には、軍資金をそろえて、あるいは一万元で共同住宅を用意してもいい。おどろいたねえ、なんて都合がいいんだろう? 考えてごらん、この住宅を建てたら、きみもそこに住めるんだよ。そこで本を書いて、ついでにぼくらのために広告でも作ってくれたまえ。ねえ、どうだい? さあ、カンパイカンパイ、そのグラスを飲み干しな」

 おかしなことになってきた。彼がグラスを持ち上げるので、私も彼に従うほかなく、すでにしゃぶり終えた楊梅やまももの入った酒を飲み干した。彼は酒の半分を飲み干し、口をつぐみ、眼をとじ、陶然とうぜんとして一分間のあいだ静止していた。それからまたあの赤く腫れた眼をみひらき、店員に向かって大声でこう言った。

「おい! もう二杯もってこい!」


〈原文〉

  谈到了这里,他的颜面转换了方向,不在向我看了,而转眼看向了外边的太阳光里。

    “嗳,这一回我想总可以成功的。”

  他简直是忘记了我,似乎在一个人独语的样子。

    “初步机械二千元,工厂建筑一千五百元,一千元买石英等材料和石炭,一千元登广告,嗳,广告却不可以不登,总计五千五百元。五千五百元的资本。以后就可以烧制出品,算它只出一百块的制品一天,那么一三得三,一个月三千块。一年么三万六千块,打一个八折,三八两万四,三六一千八,总也还有两万五千八百块。以六千块还资本,以六千块做扩张费,把一万块钱来造它一所住宅,嗳,住宅当然公司里的人是都可以来住的。那么,那么,只教一年,一年之后,就可以了……”

  我只听他计算得起劲,但简直不晓得他在那里计算些什么,所以又轻轻地问他:

    “你在计算的是什么? 是明朝的演题么?”

    “不,不,我说的是玻璃工厂,一年之后,本利偿清,又可以拿出一万块钱来造一所共同的住宅,吓,你说多么占利啊!嗳,这一所住宅,造好之后,你还可以来住哩,来住着写书,并且顺便也可以替我们做点广告之类,好不好? 干杯,干杯,干了它这一杯烧酒。”

  莫名其妙,他把酒杯擎起来了,我也只得和他一道,把一杯杨梅已经吃了剩下来的烧酒干了。他干下了那半杯烧酒,紧闭着嘴,又把眼睛闭上,陶然地静止了一分钟。随后又张开了那双红肿的眼睛。大声叫着茶房说:

    “堂倌! 再来两杯!”


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