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『イマジナシオン』 toron*

留学生にすすめたい短歌シリーズ

三冊目は、toron*『イマジナシオン』(書肆侃侃房)

空、空、空、空の車はつかまらずつかのま月へ挙手をしている

toron*『イマジナシオン』

想い出にきれいな蓋をするようにメロンソーダの上にバニラを

はつ雪と同じ目線で落ちてゆくGoogleマップを拡大させれば

見立てがとてもいいんです。
これだけでなく、見立ての短歌で溢れています。


きみがいつ倒れ込んでもいいようにホットケーキは二段重ねる

そうそう、あれは疲れたときにダイブしたくなるようなフォルムと色だ。
そういえば、最近電車の広告で、「北海道チーズ蒸しケーキ」のぬいぐるみクッションなるものを見た。


三面鏡じっと見つめてそのなかでいちばん強いわたしを選ぶ

これも共感。


きみもまた降りるイメージで語るのか螺旋階段を死に喩えれば

おもしろい。
たしかに「死」が螺旋階段を上るイメージだったっていいし。西洋人はそうだったりするかも。


以下の2首は、個人的に共感したもの。

鯖味噌煮定食だったレシートが詩に変わりゆく古本のなか

冷ややかに星は輝く何ひとつ為し得なかった日の黒ラベル

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