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ソニーのドローンが5GHz帯を使えない理由

幕張メッセで開催してるJapan drone展でsonyの新ドローンであるairpeakを見てきた。機体の性能面は特別問題ないし、カメラとアプリの連動性が高いこともあり、空からのスチール撮影や安定した動画には十分使えそうだ。

同ドローンにはαシリーズのミラーレスが搭載できるのが特徴だが、モニタリング用のFPVカメラが別途ついている。専用アプリが起動したiPad上で両方の映像が確認でき、アプリ上では露出設定やフォーカスなど簡易的なカメラの設定変更は可能だ。9月に使えるのか未だに不明だけど確実にキャパは広がるので使うのが楽しみだ。

しかし、ここで問題がひとつ。
モニタリング用のカメラの前で手をグーパーするとiPad上でしっかりと遅延を確認できたのである。
まぁ当然そうなるだろうとは思いながらも周波数について聞くと、

『日本国内は2.4Ghzです。』

とのこと。
一見、普通の説明に見えるこの一言にはある種の「ヤバさ」を含んでいて、多くの人が知らず知らずのうちにこのヤバさを前提にやりくりしようと考えてしまう。つづけて、海外への持ち込み時の電波の動作について聞くと、

『海外では5.8GHzが使えるが、日本仕様は解放されていない。海外で購入し日本国内に持ち込むこともできないし、日本仕様のAirpeakを5.8GHzが使える国に持っていっても日本仕様のまま機能する。』

とのこと。
並行輸入自体は可能だけど電波法に則った運用ができないという意味で、「持ち込むことができない」といったのだと解釈している。

ここで出てきたのが5.8GHz帯(=5800MHz周辺の帯域)。2.4GHzよりも高い周波数でありドローンの映像伝送はこの周波数が用いられることがもはや世界的にデファクトスタンダードだ。

5.8GHzを使うことができればコントロールやミラーレス映像の確認は2.4GHzで、モニタリング用のFPVカメラは5.8GHzのように棲み分けることできる。そうすると映像伝送の送受信がスピーディ、かつ鮮明になり、FPVでの操縦がよりスムーズになる。操縦の難易度が下がればよりリスクを取れる幅も増え、表現の幅も広がる。

こうしたファクトを知らなければ2.4GHzでの操縦に満足していたかもしれない。ちょっと遅延を感じながらミラーレスの高画質映像に感動したかもしれない。しかし、元々持っている可能性を閉じ込めるような製品に(環境に)僕はワクワクを感じない。

ここで自作ドローンに少し触れる。
自作ドローンの多くは映像伝送に5.8GHzを利用して操縦をしている。5.8GHzを業務で使う場合は専用の免許と総務省への申請が必要となる。遊びの場合でも同じような申請が必要になってしまっているが、その不条理についてはここでは触れない。

なぜ僕は2.4GHzでやらずに5.8GHzでやるのか?
それは2.4GHzでは絶対に満足できないからだ。
絶対だ。2.4GHzでFPV操縦なんて気持ち悪くてできたもんじゃない。一度でも5.8GHzの映像伝送のスピードを味わってる人は逆戻りはできないだろう。

今から昔のアナログTVの映像やYouTubeでも4KやFHDではなくHD未満の低画質な映像に戻れますか?それと同じくらいの差があると僕は思うけど、そうした認識を持つ前に、技適問題や各種規制により、構造的に情報が非対称になってしまっているのが日本の現状だと思う。

免許を取ったり申請すればできる事実があるのにSONYがやらないのには当然ながら理由がある。中でも法的な問題が大きいだろう。

しかし、最終的には単純にコストに見合わないからだ。割りに合わない。そしてモチベーションを持っている人がいないからだ。わざわざ電波法に楯突いたり回避するための策を練ろうとする人もいない。

今日話した担当の人たちは、FPVドローンはおろか、Airpeakすら操縦したこともないだろう、さらに周波数の特性を十分理解しているわけではないと感じた。そうした中で仕様策定をしていたら、「法律の範囲内でスムーズにやることを考えて」日本国内では2.4GHzのみに制限してしまう、ことは十分考えられる。

ちなみにこれはソニーに限った話ではなくドローン界隈はほとんど同じで、OEMで持ってきた海外ドローンも同じように「改悪」されて国内にやってくる。DJI Japanだって同じように制限をかけてくる。ただDJIのいいところ?はユーザーの気持ちを理解していて、抜け道をちゃんと用意してくれるよね笑。

こうした話が果たして電波に限ったことなのかとても疑問で、日本はもはや構造的に進化が遅れた状態で製品が届き、何も知らずにそれを使うことが大半なのではないか?

と思い考えていたら幕張メッセからの帰りの電車を乗り過ごしたので終わります。

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