ギガントアーム・スズカゼ 第4話 製作途中版①
◆ ◆ ◆
「アレがインターポールの……」
「ああ、M案件対策員。本当にお目にかかる日が来るとはな」
「初動がとんでもなく早いな、噂通りだ」
「そもそも警官じゃないんだよな。確かエルガディア・グループとかいうとこの」
「らしいな。にしちゃあ良い動きをしてる」
「そらそら無駄口を叩くな、引継ぎは終わったから――」
口々に囃し立てる所轄警官や消防員達の声を、星山道彦は扉を閉じて遮断した。
「うーん。僕達思った以上に大人気ですよ先輩」
「直に慣れるわ。それより星山クン、現場調査で第三者を可能な限り締め出した次にする事は?」
「ああ、えっと」
エルガディア・グループへスカウトされて半年、現場へ出て来たのは今回が初めてである星山は、必死に記憶を手繰り寄せる。
やがて思い出し、懐から取り出す。スマートフォンと、コンパスに似た金属機器。即ちマジック・ディバイダを。
「魔法を用いた現場の封鎖、でしたね」
星山はスマートフォンを操作。実行されるはアプリケーション、ではなく魔法だ。連動するディバイダ先端から放たれた光は、扉を突き抜けて外の警官達を包む。ごく弱い催眠魔法。これで余程の事が起きない限り、彼らが非現実的な光景を見て驚く事はなくなった。
「よろしい。では検証を始めましょう」
そう微笑ましたのは、星山より背が高い金髪の女性だ。
彼女の名はチェルシー・キーン。シニヨンにまとめた長髪に、赤ぶちの眼鏡と緑の瞳。その外観通りチェルシーは日本人ではない。そもそも地球人ですらない。ミスカ・フォーセルと同じエルガディア人なのだ。
ミスカと同じスーツに身を包む彼女は、おもむろに懐から取り出す。四辺を金属で補強された、小さい透明な一枚板。つまりプレートを。
慣れた手つきでチェルシーはプレートを操作し、魔法を起動。プレートそのものが宙へ浮かぶと、彼女の右肩少し上で静止。更にその画面へ男の顔が表示される。
「繋がったか。こちらはエルガディア・グループM案件対策室所属のミスカ・フォーセルだ。そちらは――」
映りこむ男――ミスカはプレートの画面越しに、チェルシー達の居場所を見た。
焦げた畳。割れた壁。散乱する家財の数々。様相は随分変わったが、見間違える筈がない。
そこはつい昨日、ミスカが地球から離れる原因の起点となった場所。つまり加藤一郎が借りていた部屋だった。
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