ギガントアーム・スズカゼ 第七話 製作途中版⑦
「何これ? 静止画像?」
「違う。この仮想空間内では現在、外界と比べて三万倍の速さで時間が流れているんだ」
「え、そんな事までできんの魔法って」
「勿論だ。相当量の魔力を消費するがな」
「十分に発達した魔法技術は、化学と見分けがつかないというワケですね」
にこやかに言いながら、ジットはまた一つ菓子をつまむ。
「はぁ……てか、スパイ対策? いるかいないか分かんない相手の為に、ホントにここまでしなきゃなんないわけ?」
「勿論。むしろこれでようやく一息付けた感じですよホント。こんなにリラックスできるのいつぶりかなあ」
ニコニコ笑いながら、途方もない事を言ってのけるジット。つい忘れてしまいそうになるが、そもそもここは戦場の只中にある戦闘兵器のコクピットだというのに。
改めて彼の半生を、一郎は想像する事さえ出来なかった。
「実際、ディナード四世の警戒は正しい。加藤、覚えているか? そもそもこの世界の、イーヴ・ラウスの現在の有様を」
「え? ああ一応。なんだっけな、でっかい六角形がたくさん張り付いてて、変なサッカーボールみたいになってたよな」
「サッカーボール。ふふ、言い得て妙ですね」
ジットの手の上へ、不意に現れる小さなサッカーボール。魔力による編み上げ。机上でもてあそぶ。
「その通りだ。ではその六角形を作り出した原因はなんだ?」
「? ギガントアームなんだろ? スズカゼ以外の」
「そうだ、それもアンカータイプと呼ばれる最新型のな。では、それを踏まえてもう一歩踏み込んで聞こう」
「何だよ相変わらず持って回るな」
「エルガディア魔導国が、アンカータイプを造り出せたのは、何故だ?」
一郎は、ミスカの言葉の意味を計りかねた。
「……? つくったから、だろ?」
「食料や芸術作品ならそれで通っただろう。だが、ギガントアームは兵器だ。加藤の物差しに合わせるなら、戦車や戦闘機……いや、戦艦や巡航ミサイルに例えた方が良いだろうな」
「そんなに!?」
「そりゃそうですよ。スズカゼだってアンカータイプなんですから、理屈上は同じ事が出来る筈です」
勿論させませんけどね、とジットは付け加える。
「もっとも建造当時はそんな事が出来るとは、世界の誰もが考えなかったろう。だがそれでも、エルガディア魔導国が常軌を逸した量のハイブリッド・ミスリルを急ピッチで輸入、あるいは製造している事は明白だった」
「ストップ、ストーップ」
「なんだ」
「そもそもそのハイブリッド・ミスリルって何? ヤバいもんなの?」
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