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チロルチョコをめぐって、幸せの在り方を考えた。

「コンビニでチロルチョコ買ってきていい?」

突然の私の発言に
旦那は「?」という反応。

それもそのはず。

私は

口寂しくなったらチロルチョコ!
見かけたら買うよねチロルチョコ!!
チョコと言ったらチロルチョコ!!!

というほどの
チロルチョコ愛好家ではない。

いや、チロルチョコは好きだ。
だけど、たまたま誰かに一粒貰ったら嬉しいなぁという程度で、
自分から率先して買うことはない。

でもまぁ、チロルチョコといったら
クッキーアンドクリーム味と
きなこもち味と
ミルク味が好きなのよね、みたいな
一応自分の好みはある位には好きだ。

そんな私が
「コンビニでチロルチョコ買ってきていい?」
と突然言ったもんで、
旦那は一瞬、何のこと?という顔をした。

なぜそんなことを言ったのかといえば、
家族で久しぶりに遊びに行った公園の近くに
たまたまファミリーマートがあったからだ。

ファミリーマートがあるなぁと思ったら
最近見たネットニュースが
突如頭の中に蘇った。

『大人気絵本コラボ!
新商品「チロルチョコ〈ねないこだれだ まっくろソフトクリーム〉」
全国のファミリーマートで9/12~発売』

『ねないこだれだ』という絵本は
せなけいこさんという方が書いた絵本だ。

見たことあります?

ちょっと怖いタッチで描かれたおばけが
夜に寝ない男の子をおばけにして、
おばけの世界に連れていく話。

恐らく、伝えたいのは

〝早く寝ないとおばけに連れてかれるよ〟

それだけ。

その子が最後に助かるとか、
とはいえ、おばけの世界で楽しく暮らすとか、
現代で良くある
ハッピーエンドで終わる絵本とは真逆を行く。
男の子はおばけになって
おばけに手を引かれて
おばけの世界にとんでいって終わる。

大人になった今は、その潔さが好きだ。

絵も少し怖くて、
文のリズムが良くて
とにかく、癖になる。
繰り返し読んでしまう。

小さな頃は親に何度も読んでもらった。
そして今は、私が読んでもらったボロボロの本を
息子達に何度も読んでいる。

文をすっかり覚えた2歳の息子は、
上手にページをめくりながら
辿々しくも読み聞かせをしてくれる。

特に、おばけの

「こんな時間におきてるのは、だれだー!」

というセリフは最高に上手で、
情感たっぷりに読んでくれる。

大声で叫ぶ時もあれば、
小さく囁く時もあって、
おばけの怖さを伝えようと、様々なバリエーションを試しながら自分で演出している。
表情もおばけそのもの。
それが可愛くっておかしくって
思わず笑いそうになる。

けど、我慢我慢。
ここは私も演技をして
怖い気持ちを色んなバリエーションで演じる。

私が怖がると、
その姿を見て喜んだ次男は
また最初から読んでくれる。

子育てあるあるの、無限ループ。

でも、この無限ループを巻き起こす絵本って
とっても良い絵本だと思う。

ちなみに『きれいなはこ』という話もあるんだけど、
その絵が旦那は物凄く怖いらしく
最初読みきかせた時、

「この本無理!絵が怖い!俺苦手!」

と、息子達よりも後退りしていた。
なんか絵を見ると力が抜けるらしい。

おばけに口を大きくされた犬の絵

こちらもおばけが出てきて
喧嘩をした犬と猫をおばけにして、
おばけの世界に連れていってしまう。

〝友達にひっかいたり噛みついたりすると
おばけに連れてかれるよ〟

分かりやすいメッセージが
子どもの心に刺さりまくる。

それだけにとどまらず
旦那にイラついた時は
この絵本を旦那の目につくところに置いておくと

「ヒヤァァァァァ!!!」

という旦那の叫び声が聞こえて
私はニヤリとほくそ笑むという一連の流れも
我が家の定番になりつつある。

旦那のお仕置きグッズにもなる
最高の絵本なのだ。


その他にも、
可愛いチャーミングなおばけが出てくる話もある。

うさぎを怖がらせたいから
おばけが一緒にメガネを探してあげたのだけど…
うさぎの作った天ぷらを
こっそり食べようとおばけがやってきたのだけど…


どちらもうさぎに翻弄されて
散々な目にあうおばけが
可愛くて憎めない話。

このシリーズに出てくるうさぎを見てると、
結局は天然な人が1番最強なんだな…
と思い知らされる。

あとは、良いおばけが出てくる絵本もある。

見た目は怖いおばけだけど…

なんとこのおばけ、
根っからの良いおばけ。

今までの設定だと
お風呂に入らない子をおばけの世界に連れて行きそうなのに
お風呂が好きな男の子の話なので
おばけの世界には連れて行かれない。
むしろハッピーエンド。

だけど、この絵本を読んだ後、
息子達はちゃんとお風呂に入るんだよなぁ。


この振れ幅が
せなけいこさんの絵本の魅力だと思う。

シュールでクスッと笑ってしまう作品も
なんだか不気味さを残す作品も
可愛くてニッコリしてしまう作品も
私も息子達も旦那も大好きなのだ。

そんな大好きな
せなけいこさんの『ねないこだれだ』とのコラボとなれば、
チロルチョコも食べてみたくなる。

あの柄のチョコを手にしてみたくなる。
しかも一粒38円。
お財布にも優しい。

まんまと企業の戦略に
どっぷりとハマってしまった。



旦那に理由を説明すると、

「え?!そんなコラボあんの?
いいよ!買ってきなよ!」

と、
むしろ買ってこい!俺も欲しい!
みたいな空気で背中を押された。

早速店内を探すも、完売。

仕方ない。
こういうのって、一期一会だし。
それにしても『ねないこだれだ』って
こんな人気なんだ。
発売して5日で既に完売なんて凄すぎ。
そうだよね、あんな可愛い包み紙なら
皆ついつい買っちゃうよね。

完売していて残念な気持ちもあるけど
なぜか誇らしくもある。



公園でひとしきり遊んだら
辺りはすっかり暗くなっていた。

帰る途中にもう一軒ファミマがある。

「どうする?寄る?」

旦那に聞かれる。

「いやぁ…もう疲れてるしいいや。
早く帰ろ…」

明日は仕事だし
遊び終わった後で疲れてるし
またファミマに寄る機会あれば見てみるわー

位の返事をしたら
旦那の目の色が変わる。

「いや、寄ろう!
ここが完売してるならもう手に入らないかもしれない!
急がないと無くなるよ!
そんな悠長なこと言ってたら
一生手に入らないから!」

旦那の勢いに押されて
なぜか2軒目のファミマに寄ることになった。

既にやる気のない私と息子達は
ファミマの駐車場で待機。


〝いやいや、言い出した私より
旦那の方が欲しくなってるって
どういう現象起きてるの…〟

そんなことを思いながら暗い車内で待っていると
小走りで旦那が戻ってくる。

「もうないって。完売。」

心なしか眉間にシワがよっている。

じゃあ今度こそ本当に仕方ないね、
めっちゃ人気だね、コラボチロルチョコ!

と、私が口にする前に
旦那が暗がりでポチポチ何かを調べ始めた。

すぐに耳にiPhoneをあて、

「もしもし?あ、わたくし◯◯と申しますが、
あのー、商品の在庫があるか確認したくてお電話したのですが…」

と、通話を始めながら車の外に出る。

恐らく内容からして、
別のファミマの店舗だろう。

何なのこの執着心。
何なのこの行動力。

そんな引き気味の私の隣で
長男が楽しそうに言う。

「あれ?パパまたフィギュア買ってるの?」

「え?!どういうこと?」

「パパさぁ、ママがいない時によくあんな風に電話してるよ!

もしもし?わたくし◯◯と申しますが、
ドラゴンボールのフィギュアってまだ置いてありますか?

とか言ってさぁ!」

途中、パパの電話の真似をしながら
長男が面白そうに私に言う。

有能なスパイである長男が
またしても有力情報を私に提供してくれた。


※過去の長男のスパイぶりはこちらを参照↓



なるほどね、パパって
ママがいない時にそんな電話してるのね?

「うん!よくしてるよ!
そんで欲しいフィギュア手に入れてるの!」

じゃあ次から電話したらすぐ教えてね。
教えないとパパ、一生アホみたいにフィギュア買うから。
それを止めるのがママの役目だから。
あ、お菓子食べる?
とりあえず教えてくれたお礼ね。
今度君のためにポテチ買っておくから。
また電話したら教えて?頼むね?

スパイと暗がりで
情報ネタお菓子報酬を取り引きしながら
私は旦那に目をやる。

あの執着心と行動力のせいで
我が家の押し入れや納戸のフィギュアの数が
どんどん膨れ上がってるのね。

いや、あのフィギュアの数だけ
執着心と行動力が
どんどん膨れ上がってるのね。

はぁ…。


車に戻ってきた旦那は

「あるって!最後の6個!
取り置きしておいてくれるって!」

と、声を弾ませながらエンジンをかける。

コンビニが取り置きしてくれるとか
衝撃の事実なんだけど。
しかも最後の6個って。

旦那の執念に怯えながらも
気付けば旦那の勢いに飲み込まれている私もいる。

冷静に考えて私は何もしてないんだけど、
旦那の執着心と行動力のお陰で
何となく欲しかったチロルチョコが
あれよあれよという間に手に入ることになった。

そして我が家にお出迎え。

買えた。ドロボウ率高め。

ご覧の通り、おばけの柄は売り切れていた。
だけど店員さんが
チロルチョコの入ってた箱もくれたらしい。
優しい。

6粒しかないから大事に食べようと思っていたけど、
息子達が欲しがるので一瞬で2粒なくなった。

長男は「うん、うまい!」と食べきり、
次男は「ちょっとぼくこれいやかも」と
口から出していた。

「おばけの柄のチロルチョコ欲しかったけど、
可愛いから皆おばけ買うよね。」

私が残った4粒を眺めながら言うと

「でも手に入っただけラッキーだよ!
だって、もう転売してるヤツらいるよ!
許せねぇよ!」

と、転売事情をすぐチェックして
転売ヤーを敵視している旦那が
私に転売情報をリークしてくる。

ふーん、と
宇宙戦争のアニメを横目で見るような気持ちで
気のない返事をする。

私にとっては転売ヤーの動向や倫理観など
割とどうでもいい。
生きてる場所が違いすぎる。
でも、旦那にとっては
身近にいる憎き相手なのかもしれない。

さてさて、旦那のフィギュアや1番くじで培われた能力のお陰で
私は欲しかったチロルチョコを手に入れた。

そして思った。

私みたいに
何でもかんでも巡り合わせで生きてく人間と
旦那みたいに
どうにかして手に入れてく人間と

どっちが幸せなんだろう、と。


次の日。
旦那が

「ただいまぁー!」

と、声を弾ませて帰ってきた。

手にはチロルチョコ。
昨日の倍の数は買ってる。

「帰り道のファミマ、2軒寄ったら
おばけ柄あったよ!
買ってきた!!!」

念願のおばけ柄チロルチョコ

「えー!ほんとだ!可愛い!」

ありがとうー♡と、
チロルチョコを受け取る。

おばけ柄は勿体無いので
ドロボウ柄を一粒食べてみる。

真っ黒なチョコの中に
マシュマロとラズベリーソースが入ってる。

美味い。

でも、一粒でいいかな。

忘れていた。

私はチロルチョコ愛好家ではない。

そんで、チロルチョコといったら
クッキーアンドクリーム味と
きなこもち味と
ミルク味が好きなのよね、やっぱ。

おばけ柄もドロボウ柄も
結局中身は一緒だしね。

急に冷めたことを思う。

私みたいに
急に冷める人間と
旦那みたいに
いつまでも熱い人間と

どっちが幸せなんだろう。

冷蔵庫には
冷えたチロルチョコがある。

冷蔵庫を開けるたびに
私はおばけと目が合う。

旦那が頑張って手に入れてくれたチョコ。

私1人じゃ
きっと手に入れられなかったチョコ。

そう思うと、
冷蔵庫の中のおばけも
少しニッコリしてくれる。

でももしかしたら、
おばけのチョコが欲しくて
ファミマに行った誰かが
我が家が買ったせいで手に入らなかったかもしれない。

そう思うと、
冷蔵庫の中のおばけが
少しシュンとして見える。

譲り合うことも
執念で勝ち取ることも
諦めることも
どれも間違ってないからなぁ、と
冷えたおばけを見ながら思う。

ただ一つ言えるのは
情熱的に生きる旦那も
すぐに冷める私も
お互い補い合っているから
それなりに幸せに生きてる。

いつ食べ切れるか分からないチロルチョコ。

だけど、
食べる時は大切に食べようと思う。

だって、
せっかく我が家に来てくれたのだから。

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