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変なとこで気付く成長。

クリスマスイブの夜、
プレゼントが楽しみな長男と次男は
なかなか寝付かなかった。

いつもより夜更かしして、
ようやく次男が寝付いて、
長男はまだ起きていた。

部屋は真っ暗なのに
何だか落ち着かない様子だ。


「ねぇ、ママ。
ママの1番好きな人って誰?」

暗がりで長男の方を向くと、
ちゃんと目を閉じたままの長男が
静かに呟く。

私は寝る前の暗い部屋で
長男と話すのが好きだ。

長男の目が閉じているのを確認して、
私も目を閉じる。

「もちろん、長男と次男だよ」

「そっかぁ。じゃあパパは?
パパの1番好きな人は?」

反対側に向かって、
長男がたずねる。
奥から旦那の声がする。

「ママだよ」

〝おいおい、そこは息子達だろ!〟

と、心の中でツッコミながらも
ちょっと嬉しい私もいる。

こちらにグルンと向き直って、
長男が私に言う。
もう目はすっかり開いている。

「パパは自分が1番好きで、
次に好きなのはママだって!」

「いや、パパは自分が1番好きとか
一言も言ってないでしょ!
ママが1番好きって言ったの!」

奥から旦那がツッコミをいれる。


5歳の長男が、
事実を少し捻じ曲げようとしている。

多分旦那が
私を1番好きだと言ったのが
あまり面白くなかったんだろう。


長男は、すました声で続けた。


「でも、ぼくは自分が1番すきだよ」


ハッとさせられた。

長男はたまに
物事の本質をつく時があって、
その度に私はハッとさせられる。

確かに、自分が1番好きというのは
あながち間違いではない。
というか、人間て結局は
自分が1番好きなのかもしれない。

それに、胸を張って自分が好きと言えるのって
本当に大切なことだし素敵なことだ。

旦那がワーワーと言っていた言葉が蘇り
器のちっさい奴に思えてくる。

それに比べて長男ときたら、
〝人間とは〟みたいな境地で話す
凄い人みたいに思えてくる。

いや、本当は事実を捻じ曲げた上に
捻じ曲げた事実を正当化してきてるだけなんだけど。

言葉を巧みに操り、
旦那を器のちっちぇー奴に仕立て上げてる。

凄いねぇ。

成長したねぇ。

その才能、
真っ当なことに使ってねぇ。

変なとこで長男の成長を感じて
一人で感心していると
長男が続ける。

「でもね?
ぼく、本当の本当は
自分と同じくらい好きな人がいるんだ…」


こちらを向いて長男が小さな声で
でも、ハキハキと話す。

すっかり長男が出来た人間だと
心奪われている私は
長男の目をじっと見る。

長男はいつも
ママが1番好きだと言う。

きっと私の名前を挙げてくれるだろう。

もう寝室は私と長男、
2人の世界になりつつある。

私は優しい眼差しで長男を眺め、
頭を撫でながらたずねる。

「だれが好きなの?」





「サンタさん!!!」



目がキラッキラ光った長男が
少し大きな声で言う。

「サンタさんて、おもちゃくれるんだよ!
ぼく、だからサンタさんが1番好き!」

心なしか、サンタさんに聞こえるように
窓に向かって
やや大きめな声で言う長男。

寝ているので無理だったが、
起きてたら膝から崩れ落ちてた。

長男が、サンタさんに
媚を売っている。

5歳で媚を売っている。

媚を売れるようになったら、
もういつ大人になっても平気だねぇ。

成長したねぇ。

でも媚売る相手は選びなよぉ。


キラッキラした目で
〝サンタさんが1番!サンタさんて最高!〟の気持ちを伝えてくる長男。

「…きっと、サンタさんには
長男の声が聞こえてると思うよ…
明日は特大プレゼントが届くかもね…」

仕方ないので、
消えいるような声で答える。


翌日、特大プレゼントに
朝から大喜びの長男と次男。

次男は「サンタさん」と
辿々しく言いながら
窓の方を指差した。

去年はキョトン顔炸裂だったのに
〝サンタさん〟なんて言えるようになっちゃって、
次男も成長したねぇ。
凄いねぇ。


長男がサンタさんを1番好きだと言ったのは
クリスマスイブの夜だけで、
再び私の首位は奪還された。

長男。
サンタさんはちゃんと君の声を聞いているよ。

でも、
ママが1番好きって言った方が
もっと良いプレゼント届くかもね。


さてさて、この記事。
去年、旦那とのクリスマスケーキについて書いたものなんだけど
未だにたまに読み返すと声出して笑っちゃうほど
自分の中で気に入っているんだけど、↓

去年よりは旦那のクリスマスケーキの買いっぷりも少しはマシになった気がする。
(量的には去年の2割減:妻調べ)

とは言え、相変わらずケーキ残るし
結構辛い顔で2人して食べ切った。

そうか。
共にケーキを苦しみながら食べ切ってくれるようになったのが
旦那の成長した所かも。

「俺、ケーキの買い方成長した?」

「いや、まだまだだな。
っていうか、なんでこんな買うの?

長男は上に乗ってるチョコだけ、
次男は上に乗ってるイチゴだけしか食べないの、
いつになったら分かるの?

あと、アイスも4袋とか買ってきすぎ。
冷凍庫パンパンなんだけど…」

ケーキを買う量は少し減ったが、
その分アイスを4袋も買ってきた旦那に
やや殺し屋の顔で睨みをきかせながら
ノンブレスで捲し立てる。

ケーキの上に乗ってるサンタが硬い。甘い。


「だって…」

恨めしそうな顔で旦那がコチラを見る。


「だって、
あんなに長い列に並ばされて
ちっちゃいケーキ2個しか買わないなんて
俺には耐えられない!!!
せっかく並んだのに!!!」


鼻息荒く伝えてくる旦那を見て

〝なるほど!
そういう理由で買っちゃうのね!〟

1年越しに、謎が解けた。

行列に並ぶ旦那を想像してはいたが、
並んでいる時の心の内までは
なかなか想像が及ばなかった自分に気付いた。

これで
私もまた一つ成長した気がした。


振り返れば、
今年も色んなとこで家族の成長に気付いたなぁ。

伸びしろの無さそうな
私と旦那も成長した部分もあったので
来年も諦めずに過ごしたい。

クリスマスから書こうと思って
なかなかnoteが書けなかったので
今年最後にあげられてよかった。
これで思い残すことはない。

皆さま、
今年も本当にありがとうございました。

来年も良い年になりますように。

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