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オフシーズン、万歳!

2009年3月11日~21日 アイルランド紀行6
3月12日曇りときどき晴れ Dublin - New Grange - Drogheda④ 

とっぷりと暮れてしまった。
私たちは一路ドロヘダ(Drogheda)に向かっていた。この辺でもっとも大きい街だ。

到着日のダブリン以外は泊まる場所を決めていなかった。
アイルランドではB&Bにたくさん泊ろうと計画していたが、慣れない異国のドライブに疲れ果てた夫はホテル宿泊を希望。「地球の歩き方」と「Lonely Planet」の両ガイドが推奨する、街の入り口にある「The D Hotel」のフロントに、1泊2万円くらいを覚悟して値段を聞きにいった。

室料はなんと朝食付きで100ユーロ、換算すると一人当たり約6500円(2009年レート)で、日本の平シティホテル素泊まり以下の価格といえた。
あまりに予想外な値段に、「本当に朝食付き?フルブレックファースト?」と返したら、「はい。シーズンオフなので。」とフロントの女性はにっこり微笑んだ。すっごい、すっごい。その後の旅でもほとんどのホテルが朝食付100ユーロ前後だった。オフシーズン万歳!

The D Hotelはボイン川の河口に近く、部屋はすべてRiver view!街の明かりが映る川面が見え、かもめが幾羽も群れて、情緒たっぷりだ。
またThe D Hotelの「D」とは「Design」の頭文字なのか、部屋のインテリアがスタイリッシュですばらしかった。まゆを多数組み合わせたおしゃれな照明はとてもやわらかい光を醸し出す。

その下のソファーでしばらく休息した夫は元気が回復したらしく、夕食行こうと街に繰り出すことになった。よし、昨日のギネスのリベンジすべし!
運河沿いに成長したドロヘダのしっとりとした町並みを見ながらレストランを探したが、どうもピンとくる店がない。

やっと見つけた街中のホテルに併設されたブラッセリーはすでに閉まっていた。フロントのおじさんに残念な素振りを見せると、「お勧めの店があるよ!」とカウンターから出てきて、わざわざ街はずれにある店まで自ら案内してくれた。

案内されたレストラン「REDZ」。
手前がオーソドックスなパブで、その奥に赤を基調とした斬新この上ない内装のレストランが広がり、地元の人であふれかえっていた。

REDZ

入り口近くの比較的落ち着いた席に通され、まず飲み物を注文した。
「ギネス、ハーフパイント、プリーズ」、ウェーターの人が黙ってうなづいた。

やっとアイルランドでギネスが飲めるのだ。隣のパブから運ばれてきたギネスの黒い泡が美しいこと!黒ビール独特の苦みがのどを潤おし、幸福感に包まれた。プハーッ……。
夫もギネスかと思いきや、彼はハイネケンを注文。黒ビールはのど越しが重いと感じるらしい。アイルランドにいる間、彼は一度もギネスを頼むことなく、ずっとカールスバークなど軽めのビールを飲んでいた。

ヨーロッパの一皿はボリュームが多い傾向があるので、私は単品を選び、お腹が空いていた夫は夕食セットを注文した。

しばらくして出てきたのは、ゆでた皮つきジャガイモだった。
「これは頼んでいないけど。」と首を横に振ったら、「食事にはつくんだよ。」とウェイター。どうもアイルランド版お通しらしい。皿にこんもりと積まれたジャガイモはそれだけでお腹がいっぱいになりそうだ。
そしてこの後、どこのレストランでも、このお通しなるジャガイモが出てきた。時には人参と一緒だったり、ブロッコリーとだったり。
アイルランドの痩せた土地で、ジャガイモがもっとも生産性の高く、主食であった歴史が垣間みえた。
  
私が注文したエビのクリームソース煮はすばらしくおいしかった。クリームにエビのエキスがしみ込み、絶品!!

かつてイギリス旅行であまり食事に恵まれず、その隣国なのだからさほどのことはなかろうと期待もしていなかったのだが、こんなに美味しいとは!!ガーリックトーストに残ったソースをからめて、さらにうっとり気分。
夫の夕食セットは、ベーコンの塩味がいいところで決まっているシーザーサラダに、香草を詰めたチキン焼き。これまた水準以上に美味しかった。
街の人が推薦してくれるレストランにまず間違いはない。

ジャガイモでいささかお腹がふくれていたが、あまりの美味しさに残してはもったいないと、二人でせっせと口に運んだ。向こう席の地元の客たちは食事がひと段落して、おしゃべりに花を咲かせている。ほろよい気分でそれを眺めながら、また一口食べてはビールを飲む。

こうして宿や食事に恵まれ、ドロヘダ゙の夜は更けていった。

2023年3月現在、スマホでbooking.comやexpediaからチョチョッとホテル予約ができるようになった。レストラン探しもトリップアドバイザーを検索すれば、街で人気のお店が一目瞭然だ。ほぼはずれなしのホテルやお店に巡り合える。とても便利だ。
しかしその分、街を歩き回ったり、人に尋ねたり、迷ったり、手作り感のある旅の醍醐味は減ったのかもしれない。

※この旅行記は以前に閉じたブログの記事に加筆して、2023年3月noteに書き写しています。

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