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SEEPSキャンプ「はじまりの話」#3

一橋の横尾です。
私は2020年4月から環境経済・政策学会(SEEPS)の理事をさせてもらっており、学会事業の「SEEPSキャンプ」の運営に携わりました。
その立ち上げ時の経緯を3回に分けて書き残すことにしました。
最終回の#3ではテンポよく過去4回のSEEPSキャンプを振り返ります。

前回の第2回の記事はこちら:

SEEPSキャンプ「はじまりの話」#3


前回までのあらすじ:
2019年9月のSEEPS年次大会で若手向けWSの企画が出て準備したものの、新型コロナで中止。
竹内常務理事の「環境経済・政策学を志す院生・PD対象の新事業」構想を企画書にして、結局は「オンラインで合宿」に。

2020年度, 2021年度, 2022年度:オンライン時代

当初の心配をよそに、初回の「オンラインでキャンプ」企画に、お蔭様で10人より多くの応募がありました。
本当に良かったです。この初回で躓いていたら、ここまで続けられなかったでしょう。

オンラインでのSEEPSキャンプ初日は緊張しました。
英語を軸に進める必要があったし、知らない人同士をZoomで盛り上げる難しさを感じていました。
参加者に無料配布した、nonpi foodboxの話題などを駆使して、どうにか無事に初回をやり遂げられたと思っています。
毎回の参加者に感謝ですが、特にこの初回参加者10人には、前例のないイベントに応募してくれたことに感謝してもしきれません。
2021年度の第2回と2022年度の第3回も毎回準備の苦労や当日への不安はあったのですが、やはり初回と比べると気が楽でしたし、スムーズだったと思います。

SEEPSキャンプ第1回(2020年度)の様子

SEEPSキャンプの特徴の一つとして、「SEEPS 会員でなくとも参加可能」としている点があります。
ここまで毎回、実際に非会員の方も応募してくれていて嬉しいです。
2021年度の第2回では、応募時に会員だった方が6名、非会員だった方が4名というバランスとなりました。

SEEPSキャンプ第2回(2021年度)の様子

2022年度の第3回は開催時期にもそれまで以上に配慮しました。
SEEPSにはLCAの方もいらっしゃるのに、第1回は日本LCA学会と会期が近く、その日程を避けたつもりが次の回はPAPAIOSの前日になってしまったり。
この辺の他の学会イベント日程も確認して、九州大学・加河茂美先生に事前に予定を伺ったりしつつ、針の穴を通すようなスケジューリングで開催日時を決めて来ました。

また、多くの日本人が留学する時代に、アメリカ、ノルウェー、フランス、イギリスなどからも参加してくれています。
コロナ禍のせいでオンラインで始めたわけですが、オンライン化していなかったら、こういった方々には参加してもらえなかったでしょう。
「禍を転じて福と為す」と言えるでしょうか。

SEEPSキャンプ第3回(2022年度)の様子

第3回にはさらに、「日本で学んだこともない」「まだ働いたことも無い」「まだSEEPS会員でもない」若手研究者の方々が国境も時差をも超えてアメリカと南アフリカから参加してくれました。
欧米の学会ならそういったことも珍しくないと思いますが、SEEPSとしては新たな展開ではないでしょうか。

これもまた、結果的にはオンライン化のおかげですし、第1回と第2回の過去の参加者がSNSや口コミで広めてくれた歴史のおかげかもしれません。

2023年度:「初回対面」までの道のり

そして、2023年度の第4回です。新型コロナが5類に移行し、満を持して「対面」でのキャンプの準備をしました。
過去3回の経験がもちろん活きる面はあったのですが、全く新しい事業を立ち上げる感覚でした。
これまでのキャンプのコンセプトと好評だった企画や特徴をそのままに、本当に「キャンプにする」。
実は、この準備は開催の1年前、第3回のオンライン開催よりも前の2022年8月にひっそりと動き出していました。

とにかく大事なのは実行委員の「質」だと思っていました。
一人目には、「はじまりのあの夜」に同じテーブルで談笑していた嶌田栄樹さん(当時は院生)にお願いしました。2022年8月にメールで依頼して、快諾してもらいました。
二人目には、幻となってしまった「若手による環境社会科学ワークショップ」への登壇をお願いしていた吉田惇さんにお願いし、快諾してもらいました。

そして、三人目です。
この対面でのキャンプを企画するには、「女性の実行委員」が不可欠と考えていました。
宿泊有りの企画で受け入れ側が男性のみでは絶対にだめだと考えていました。
なおかつ、留学生の方もこれまでたくさん参加してくれました。となると、英語でのコミュニケーションも必須です。
そういう方に「8月に2泊3日で地方部まで」来てもらう必要があり、場合によってはトラブル対応もお願いしたいのです。
こういった条件を満たせて、かつ協力してくれる若手研究者がSEEPS内で「非常に希少」だということは明白でした。

開催のほぼ1年前のお盆に、福井県立大・中井美和さんに、ちょっと長めのメールをしました。
上記の条件を満たせるSEEPS会員はほぼいなく、バイリンガルでオーストラリア、ドイツ、フィリピン、そして福井でサバイバルできる中井さん以外、私には思い当たりませんでした。
それまで3回のキャンプでも「実行委員の候補として中井さんは」という話も上がったことがあったのですが、正直に言うと「いずれ実施する『対面初回』のために温存」と私の心の中で決めていました。
中井さんは快諾してくれました。この中井さんの協力無しには、対面初回の実現は不可能でした。

このように動き出しこそ早かったものの、私に他の仕事もあって準備はなかなか進められませんでした。
また「一から」決めなくてはならない要素がたくさんあり、さらに「場所」も決める必要があって大変でした。
簡単には決まらなかったのですが、最終的に、
泊まれる太陽光発電所 Looop Resort NASU に決定しました。
三人の実行委員にはご迷惑とご心配をおかけしました。

SEEPSキャンプ第4回(2023度)の様子

実行委員は私を含め四人でやっていたのですが、なかなか3日間も現地に張り付くのも大変で、いつも私の新企画に協力してくれる東洋大学・松本健一さんに毎度のようにSOSを出し、「当日現場担当」で駆けつけてもらいました。
キャンプ当日の那須塩原駅にほぼ初対面の7人の採択者と実行委員と松本さんが来てくれた時は、それだけで一安心でした。

SEEPSキャンプ第4回:参加者が作ってくれたカレーライスと共に

いきなりレンタカーがパンクしたり、加減が分からず初日に企画を詰め込み過ぎて皆ぐったりしたり、デザートを買いすぎたり…
小さなアクシデントはたくさんありましたが、無事に事故も体調不良も無く、「対面初回」を終えられた本当によかったです。

SEEPSキャンプ第4回:夜のLooop Resort NASU

おわりに

2020年度から、環境経済・政策学会ではSEEPSキャンプを含めた各種の新事業を立ち上げました。
その効果かどうかは分かりませんが、今では学会員数の減少傾向も下げ止まり、再び増加に転じています。
(厳密な効果検証は次世代のプログラム評価者に委ねたいです。)
中でも、学生会員数が伸びているのが特徴的です。
時代の追い風や若い世代の「環境政策」に関する関心の高さを感じます。

さて、走り出して4年のSEEPSキャンプは2019年時点の田中健太さんの「若手を集めて研究集会」という形にはなりませんでした。
次の時代のSEEPSを担う大学院生など、研究成果が無い方も対象としたからです。
そんな中、その後、初回のSEEPSキャンプに参加してくれた山崎晃生さん(現・GRIPS)から、
「大学横断で環境経済学のセミナーをしましょうよ、コロナ禍ですがオンラインでもいいから始めませんか」と誘われました。2021年のことです。
そこで私は改めて山崎さんと田中さんを繋ぎ、結果的に「J-TREE」という環境経済学に特化したセミナー・シリーズを開始することになります。
SEEPSキャンプ「以外」の場にも、「はじまりのあの夜」は繋がりました。

ここまで、私目線で一人語りをしてしまい、あたかも竹内先生と私(とその裏に田中さん)だけでSEEPSキャンプを立ち上げたように感じさせてしまったかもしれません。
しかし、そんなことはありません。
これまで、ここには書ききれない実行委員と「先輩に聞く」企画の登壇者の合わせて28人のご協力があってSEEPSキャンプは成立してきました。

さてさて、SEEPSはその設立趣意書にもあるように、
「経済学、政策学および関連諸科学を総合し、環境と経済・政策のかかわりについて学際的ならびに国際的な研究と交流を促進する」ことを期しています。
従って、SEEPSキャンプでも、環境経済学だけではない、環境政策学、環境社会科学および関連諸科学の若手への広がりも意識してきました。
その上で役に立ったのが、私の京都大学時代とその後に就職した国立環境研究所時代にお世話になった方々でした。
京大時代に一緒に勉強する機会のあった清水万由子さん(龍谷大学)、篭橋一樹さん(南山大学)、何彦旻さん(追手門学院大学)。
国環研を通じて知り合えた森田香菜子さん(森林総合研究所)、尾下優子さん(東京大学)、朝山慎一郎さん(国環研)、渡卓磨さん(国環研)。

もしかしたら、「環境経済学だけの学会」では知り合えなかったこれらのみなさんを始めとした、多くの方のご協力のおかげで「SEEPS」キャンプらしくなってきたかなと自負しています。
これからのSEEPSキャンプも、私にとっての京大や国環研がそうであったように、多様なアプローチで「環境政策学、環境社会科学」を志す院生・若手の出会いの場所になるといいなと思ってます。

そして改めて、ここに書ききれなかった、様々な縁や初めてのメール依頼に快く協力を引き受けてくださった28人のサポーターのみなさんに感謝です。

さて、次は2024年度の第5回です。
前回と異なり、私はサバティカルで在外研究のために現地には行けない状況です。
また新たなチャレンジになりますが、SEEPSの同世代とこれまでの参加者のみなさんのご協力で、きっとまたうまく行くことでしょう。

SEEPSキャンプの詳細はこちら:

SEEPSキャンプ「はじまりの話」の
#1はこちら

2024年3月 横尾

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