見出し画像

ホラー耐性がないのに観てしまった映画『ミッドサマー』

映画鑑賞は好きだが、ホラー、スプラッター系は苦手なので、ほとんど観たことがない。ゆえに、『ミッドサマー』も躊躇していたが、公開初日の夜、飛び込んでしまった。

ホラー嫌いの私が観た理由

理由は、センスを信じている大好きなA24(『ヤング・アダルト・ニューヨーク』、『ムーンライト』、『20センチュリー・ウーマン』、『フロリダ・プロジェクト』、『レディ・バード』、『エイス・グレード』、『ホットサマーナイツ』など) が送り出した作品なこと。

主演がフローレンス・ピューだったこと(アカデミー賞の助演女優賞にノミネートされる演技派なのに、ファニー!)。

そして、トレーラーを観た時に、衣装や美術が好みだったこと。そして、白夜の北欧が舞台、つまり、夜じゃなければ怖くないかな(この最後の理由が大いなる誤算であった)、と。

狂喜と救済と

でも、ま、すぐに後悔(苦笑)。

夏至祭が始まったあたりから、腰は引け、私の顔はずっと歪んでいたと思う。とんでもないものを観始めてしまったな、と終始苦笑い。逆に途中で観るのをやめた方が眠れなくなりそうだったので、なんとか鑑賞。

ちなみに、私が観ていた回は退場者2人。

そうすると、あら、不思議。あ、この最後のシーンを観るために、私はずっと鑑賞していたのだな、という腹オチ感。まさかの清涼感。まさかの爽快感! 

監督はインタビューで、以下のように語る。

本作が「心の平静と方向性を失う女性の物語」であることを前提として、「太陽が決して沈まず昼夜の区別がつかないというストレスを感じる状況に主人公を置いている」とも語っている。

さらに、「ホラー、スプラッターではなく、あくまでブラックコメディであり、恋愛と失恋、再生を描いた」といろいろなインタビューで答えている。ちなみに、監督は失恋時に脚本を書いたらしい⁉︎ 

たしかに、引いて薄目で見れば、恋愛カテゴリーに属する映画のような気もする。

アリアナ・グランデはTwitterで「『ミッドサマー』が寝る前のお気に入り映画だけど大丈夫かな? 助けを求めるべきかな?」と投稿。

この映画には、セラピー(自己解放。救済)効果があると言われている。評価は「最高!」か「最低!」か、まっぷたつに分かれるだろうが、(もちろんホラー耐性の有無も大きいが)この効果を体感できたか、できないかによるところが大きいのかと思う。

女性賛美?

家父長的価値観からの解放も描かれるので、アカデミー賞授賞式で、クィアのアイコンであるジャネール・モネイがノミネートされていない今作を衣装や演出でフィーチャーしたのも納得。

ちなみに、先に公開されていたアメリカの昨年のハロウィンは『ジョーカー』とともに『ミッドサマー』コスプレが人気だったとか。衣装は抜群に可愛いので、鑑賞がつらくなると私は自分の夏ファッションに想いを馳せていた(苦笑)。

「多様性」礼賛社会に物申す?

夏至祭に参加するすべての村民は、同じ価値観、倫理観を共有し、ひとりとして異物扱いされる者はいない。この作品では終始「コミュニティの閉鎖性」ゆえの桃源郷が描かれる。

翻って、現代を生きる私たちは多様性との向き合い方(他者を認めると言うこと。寄り添うこととは何か?)をずっと突きつけられることとなる。「多様性、多様性!」と言いたがるわりに、自己と異なる他者の価値観を認めない私たちへの警鐘が鳴らされ続けるのもこの作品の大きな特徴と言えそう。

はたして、受け入れること。抗うこと。どちらが本当の悪夢なのだろうか? 

とどのつまり

かなりの体力をつかったが、結論は、観てよかった。

闇より青空に。怒りより笑顔に。枯れた花より咲き乱れる花々に、狂気を感じる。これまで自分の中にあった「恐怖の軸」がグラリとゆがんでしまったけれど。

そして、やっぱり、スプラッターは苦手だと再確認したけれど。

おまけ

パンフレットがサイコーです!

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

instagramでは、主に映画、ドラマ、ライブについて投稿しています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?