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『馬鹿ブス貧乏〜』人生を走りきるためのサバイバル書

webマガジンを運営している頃、自身のためにはもちろん、子育て世代のお母さんたちに是非読んで欲しい、と『ブスのマーケティング戦略』の著者・田村麻美さんの取材をした。公開時、「ブス」という言葉に読者の方が神経質になるかもしれない、とかなり神経を使った。(現在は当時のコメントが読めない状況だが)たくさんの肯定的なコメントいただき、ほっとしたのを覚えている。

というわけで、「ブス」というワードに加え、「馬鹿」と「貧乏」が入ったタイトルで書籍を発売するにはかなりの勇気、覚悟が必要だったろうと類推する一冊、

『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。』

帯にはジェーン・スーさんの警告コメント

これか警告文です。本作はハイコンテクストで、読み手には相当のリテラシーが求められます。自信のない方は、ここで回れ右を。「馬鹿」は197回、「ブス」は154回、「貧乏」は129回出てきます。打たれ弱い人も回れ右。書かれているのは絶対の真実ではなく、著者の信条です。区別がつかない人も回れ右。世界がどう見えたら頑張れるかを、藤森さんがとことん考えた末の、愛にあふれたサバイバル術。自己憐憫に唾棄したい人向け。

いわゆる炎上商法のようなタイトルともとられかねないリスクを負ってまで、著者の藤森さんが伝えたかったことは何だろう? 

藤森さんは(著書内で公言しているが)、フェミニストである。

フェミニズムというのは、簡単に言えば、「女だからといって損させられるいわれはないし、誰かの犠牲にされることもお断りします」という思想だ。(P.182より)

それを鑑み、以下のように3つのワードを換言していくと本書の内容が少し分かっていただけるかもしれない。

①「馬鹿」=女性は男性より頭が良くないと評価されない。

参考記事)


②「ブス」=女性は男性より容姿で損を被る可能性が高い。

参考記事)


③「貧乏」=女性の方が男性より稼ぐことが難しい。

参考記事)


「馬鹿」「ブス」「貧乏」。逃げ場がないこの3つの言葉を使ったのは、現実と幻想をゴッチャにすべきではないという強いメッセージだ。未だ歴然たる男性社会である日本の現実の厳しさをきちんと見据え、女性はどのような生存戦略をとっていけばよいのか、自身の体験を通し導き出した信条を大公開してくれたものである。

ただ「あなた」と呼びかければいいところを、著者はひたすら「馬鹿なあなた」「ブスなあなた」「貧乏なあなた」と呼びかけてくる。わざわざ冷や水を浴びせてくる。幻想で足下がすくわれないように。言い訳をして現実から目を背けないないように。何かの犠牲にならずにすむように。

大人になると、「傷つけないように」と本当のことを人に言う機会が少なくなってくる。逆を言えば、言われることも少なくなってくる。だからこそ、著者は、皆が言いづらいこと、聞きづらいことを忌憚なく発露する(たとえば、お金のことや性欲のこと、更年期のことなど)。

「人はみんな自分の人生で精一杯なんだし。要領悪くとも、なんとか生きてきたのを知っているのは私だけで、私が自分で認めてやらなければ誰も認めてくれません」

初めは警戒しながら読んでいたとしても、読了後は清々しく、自分が強くなっていることを感じることができるはず。

この本では、著者が面白い、有益だと思った書籍がテーマに沿って多数紹介されている。女性が人生をサバイブするための読むべき指南書ガイドとしても満足できるかと思う(田村さんの『ブスのマーケティング戦略』も取り上げられている)。

「馬鹿」「ブス」「貧乏」という言葉の強さに回れ右をせず。生きることに漠然と不安を感じている方には世代を超えてオススメしたい。



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